明日も耕す 農業問題の今 「細胞農業」真実を暴け 食料支配をめぐる争闘戦

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週刊『三里塚』02頁(1095号02面05)(2022/09/12)


明日も耕す 農業問題の今
 「細胞農業」真実を暴け
 食料支配をめぐる争闘戦


 自民党の有志議員が8月13日、「細胞農業によるサステナブル社会推進議員連盟」を設立し、甘利明前幹事長、松野博一官房長官らが共同代表に就任した。細胞農業とは何か。議連設立の背景にあるものは?

 日本細胞農業学会のサイトを見ると「細胞農業は、環境負荷を低減しうる持続可能な生産方法です。牛や魚などの細胞を生育して食用肉を生産する『培養肉』をはじめ、牛乳・チョコレート・皮革など、多様な資源をつくることが可能です」とある。
 シンガポールでは既に培養鶏肉が市販されている。日本国内では、日清食品ホールディングスが東大との共同研究で培養肉の作製に成功しているが、現状では市販は認められていない。
 設立された議連は「既存の食料システム、畜産関係者と調和し、食料安全保障に資するとともにサステナブル(持続可能)な社会を推進する」ことを目標に掲げ、細胞農業で生産した食品の早期市販開始に向けた提言、法案作成を行うという。

良いことだけか

 培養肉は、動物を殺さなくても肉が作れるから動物愛護になる、飼育や飼料にかかる膨大な用地がいらなくなるから環境負荷を減らすことができる、食料危機対策になると宣伝され、少なからぬ人びとが賛同している。
 だが、「地球環境にも動物にも私たちの健康にも、良いことずくめ」では断じてない。
 例えば培養肉の場合、細胞を培養するためには妊娠した牛を殺して胎児から取り出す血清が必要とされる。合成ではコストがかかりすぎるのだ。
 細胞を育てるには、栄養分の原料となる大豆やサトウキビなどの巨大モノカルチャーが必要になる。生産が大規模化したら、新たな環境負荷が生まれることは必定だ。
 さらに「細胞農業」「精密発酵」という名の下で「ゲノム編集」食品が今、出てこようとしている。遺伝子操作技術を使っているのにNonーGMO、ビーガン、自然食品として宣伝され、十分な検証もないまま、アメリカでは一部の商品の販売も始まっている。

熾烈な開発競争

 なぜ急に細胞農業が声高に叫ばれるようになったのか。アメリカが近々市場に出す培養肉を日本で受け入れるための準備だとも言われるが、コロナ危機やウクライナ戦争で高まった「食料安全保障」へ危機感だろう。
 細胞農業が実用化すれば、多くの食料が国内で生産されるようになり、海外への依存度は減少するともくろむ。だが、各国企業が熾烈な開発競争を繰り広げているので、立ち遅れたら、特許料を払わないとつくれないものになってしまう。
 要はゲノム編集と同様に、新たな食の支配をめぐる争闘戦なのだ。新たな金もうけの競争で、農業と食を破壊するものでしかない。そんなものに未来を託すことはできない。資本主義を倒すしか道はない。
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