明日も耕す 農業問題の今 ネオニコは人体にも有害 農薬漬けに終止符打つ時
週刊『三里塚』02頁(1094号02面05)(2022/08/22)
明日も耕す 農業問題の今
ネオニコは人体にも有害
農薬漬けに終止符打つ時
前回はネオニコチノイド系農薬による生態系の破壊について取り上げた。「害虫だけに効いて、人体には安全な殺虫剤」として広められてきたが、近年、健康に及ぼすリスクが多数報じられるようになっている。
ネオニコチノイド系農薬(ネオニコ)は、昆虫の神経伝達を阻害する働きがあり、さまざまな害虫に広く適用され、また脊椎動物への急性毒性(短期的な影響)が低いとされてきた。
しかし、脊椎動物の免疫機能、生殖機能の低下といった慢性毒性(長期的な影響)が研究者から報告されるようになった。EUの食品安全機関では「低濃度でも人間の脳や神経の発達に悪影響を及ぼす恐れがある」とまとめている。
そもそも何をもって「安全」とされるのか。
まず動物実験で「この量以下ならば実験動物での毒性が出ない」と判断された量「無毒性量」を割り出す。そこから例えば、ヒトとの違いを考慮して10分の1に、さらにヒトの個人差を考慮してさらに10分の1に値を小さくすれば「ヒトに当てはめても大丈夫だろう」といった考え方で決められるのが「1日摂取許容量」だ。
多数の人に残留
全ては動物実験の「無毒性量」から始まる。だが、その無毒性量が不適切だったら「安全」は崩れてしまう。その疑念を実証して見せたのが、前回紹介した報道特集「ネオニコ系農薬 人への影響は」の内容だ。ネオニコを投与されたマウスは、無毒性量のはずなのに通常とは違う不安行動を示した。こうしたチェックが十全になされたとは思えない。
基準に疑念が生じたところで、では、人体にはどれほど残るのか。
ネオニコチノイド系農薬やグリホサートの体内残留検査などを行う「デトックス・プロジェクト・ジャパン」(DPJ)が6月22日に開催したシンポジウムで、全国から集まった202人の尿を調査した結果、190検体からネオニコ系農薬が検出されたことが報告された。すでに私たちの体内にネオニコは溜まっているのだ。調査では、人体以外でも市販野菜や水道の蛇口、水道水からも検出されたという。
国は影響を否定
気候変動と同様、未来のために今すぐにでも農薬をなくしていく道筋をつくらなければ手遅れになる。だが国などは、検出される水準のネオニコ系農薬が健康や環境に影響を及ぼすとは考えにくいと結論づけている。「ただちに健康への影響はない」と強弁した福島原発事故の放射能汚染と同じ態度だ。
すでにネオニコを使わない取り組みが各地で増えている。転換の過程を支えるのは、有機農業と同様に消費者との提携・連携だ。
個別の取り組みから、さらに農薬を必要とする大量生産・大量消費に終止符を打つため、連帯して政治を変えよう。