明日も耕す 農業問題の今 切迫する世界的食料危機 国連食料農業機関が警鐘

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週刊『三里塚』02頁(1088号02面05)(2022/05/23)


明日も耕す 農業問題の今
 切迫する世界的食料危機
 国連食料農業機関が警鐘


 国連食糧農業機関(FAO)が先頃まとめた「世界の食料危機報告2022」は、世界の53カ国・地域の約2億人が危機的な食料不安にさらされていると警鐘を鳴らした。食料危機の背景には何があるのだろうか。

 FAOの報告書は、衝突によって24カ国・地域の1億3900万人、極端な異常天候で8カ国の2300万人、経済危機で21カ国・地域の3000万人が食料危機に直面しているという。
 調査は昨年の状況をまとめたもので、「ウクライナ情勢を踏まえると、食料危機は全世界に波及する恐れがある」と報告書は指摘している。
 ウクライナとロシア両国は、世界の小麦と大麦生産の3分の1を占める。他方、エジプトは輸入小麦の8割をウクライナとロシアに依存する。中東やアフリカでは、多くの国がウクライナやロシアから穀物を調達しているので影響は甚大だ。
 日本で消費される小麦は、約9割がアメリカやカナダ、オーストラリアからの輸入だが、世界的な小麦の争奪戦が進めば、食料危機はひとごとではなくなる。
 危機にかられた岸田政権は、国内支配に必要な食料供給を確保するために、「食料安全保障」について、議論を活発化させている。

「食料的安全」

 この食料安全保障について、同志社大学大学院教授・浜矩子さんが農業協同組合新聞で、FAOの定義を紹介していた。
 それによれば「全ての人が、いかなる時にも、活動的で健康的な生活に必要な食生活上のニーズと嗜好を満たすために、十分で安全かつ栄養ある食料を、物理的、社会的及び経済的にも入手可能であるときに達成される状況」だという。
 FAO定義の原題はFood security(「食料の安全」あるいは「食料的安全」)であって、「食料安全保障」という訳はそぐわない。「食料的安全」は個別国家的概念ではなく地球的概念で、万国による万人のための「食料的安全」を世界に向け叫ぶべきと浜さんは提唱する。

資本主義打倒を

 自国の食料確保ではなく、「万人のための食料」を本気で実現しようとするなら、資本主義を打倒するしかない。国家や穀物メジャーなどの大資本が食料を支配している限り、国家支配のための、あるいは金もうけのための食料確保・争奪戦はなくならない。
 そもそも目の前の食料危機の根本にあるのは、グローバル化の問題だ。 各地域で営まれてきた命育む農業が破壊され、農業は金もうけの手段にされ、主食の作物までも他に依存せざるを得ない。新自由主義が生み出した構造が、世界に広がった結果ではないか。
 ウクライナ侵攻で高まる世界戦争・核戦争危機も、世界的な食料危機も根はひとつ。新自由主義崩壊にまで至った資本主義がもたらすものだ。
 生きるために、本気で資本主義を終わらせる闘いに立ち上がろう。
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