やぐら・看板は市東さんの営農と不可分一体 「撤去すべきは空港」 新やぐら控訴審で最終陳述

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週刊『三里塚』02頁(1087号01面02)(2022/05/09)


やぐら・看板は市東さんの営農と不可分一体
 「撤去すべきは空港」
 新やぐら控訴審で最終陳述

(写真 新やぐら控訴審に先立ち東京高裁包囲デモ【5月9日】)

(写真 裁判報告集会が開かれ初参加者の労働者も発言した)


 5月9日、東京高裁第2民事部(渡部勇次裁判長)で、新やぐら裁判控訴審の第3回が開かれ、この日で結審した。
 開廷に先立ち、三里塚芝山連合空港反対同盟の呼びかけで、裁判所を包囲する霞が関デモを行った。労働者・学生・市民68人が日比谷公園霞門前に集まり、反対同盟を代表して意見陳述する東峰の萩原富夫さん、動労千葉の中村仁副委員長などが勝利への決意を表し、司会の太郎良陽一さんのリードでシュプレヒコールを上げデモに出発。宣伝カーからは婦人行動隊の宮本麻子さんが、「やぐら・看板が建つ農地を守り、軍事空港を阻止しよう」との訴えを官庁街に響かせた。

萩原さんが訴え

 午後2時、102号法廷で開廷。最初に萩原さんが陳述を行った。
 「成田空港会社(NAA)は土地の買収において農地法違反を犯し、買収したことを隠していました。空港公団(NAAの前身)は、当時存命だった市東東市さん(孝雄さんの父)に何も知らせず明け渡しの要望もせず放置していました。この経緯を見てどこが『移転目的の買収だから合法だ』と言えるのでしょうか。看板・やぐらは反対同盟のものです。その敷地の使用権は反対同盟が持っています。農業を営む小作権者である市東さんの同意のない契約解除は、誰が地主であろうが絶対に認めることはできません。契約解除は無効です。NAAに収去を求める権利はありません」
 さらに萩原さんは、「への字誘導路の直線化」を理由に土地明け渡し、やぐら撤去を求めていることについて「市東さんの営農と生活を侵害し追い出すことが目的」と断じた。さらに航空需要激減の中で、「成田はLCCと貨物の空港に変わりつつある。機能強化、第3滑走路建設などの計画を中止すべき」と迫った。
 最後にNAAを徹底的に弾劾した。「農民から土地を取り上げ、自然環境を破壊し、無駄に電気を使い、大量のCO2排出で地球温暖化を促進しているとんでもない会社です。いや、会社とは名ばかりの国営企業で、赤字になっても税金が投入され、戦争になれば成田は軍事転用されることは明白。こんな会社に市東さんの農地は絶対に渡せません。われわれ反対同盟は、勝利する日まで、成田空港の廃港と収去を求めて戦い続けます」とNAAの悪行を痛快に切って陳述を終え、傍聴席から拍手が起こった。
 続いて反対同盟顧問弁護団が、この日のために総力をあげて準備した最終陳述を行った。
 NAAは市東さんの天神峰農地に建つ監視やぐら、看板など反対同盟所有の4つの物件について「収去と土地の明け渡し」を求めて提訴したが、その言い分を丸ごと認めた一審千葉地裁が下した判決は不当だ。
 小作者に秘密裏に行われた底地の売買は無効であり、NAAは土地所有権を取得していない。そして小作者の同意なく行われた土地の賃貸借契約解除申請は農地法に違反し、市東さんの賃貸借契約は存続している。前回の専門家証言にもあった通り、慎重に考慮されるべき「正当事由」(貸主が賃貸借契約の解約を申し入れるために必要な条件)が、一審判決では一切検討されていない。
 その農地の一角に建つ監視やぐらは市東さんの生活を守るためのものであり、看板に書かれた「第3滑走路反対、強制収用阻止」などの訴えは、NAAの不当に抗議し農民として生きる上での命がけの意見表明としてある。
 成田空港は「基本計画」を無視して野放図な施設建て増しを続け、騒音で住民を苦しめてきた上、今や機能強化と称して新滑走路建設、敷地2倍化の工事に踏み切ろうとしている。これに対し飛行差し止めを求める住民訴訟が準備されており、NAAが人権を踏みにじり権力的ふるまいを続けてきたことが問い直されるべき時だ。
 新型コロナパンデミックによって全世界の航空需要は激減したにもかかわらず、「機能強化を予定通り進める」とNAAは言い張っているが、これは過剰設備、過剰投資を重ねるだけだ。「空港の公共性」の虚偽は明らかとなった。一方でウクライナ戦争によっても世界の飢餓と食糧問題の深刻性が突きつけられ、国連では「小農の権利宣言」が出されている。
 もともと北総地帯は農林省がお墨付きを与えるほどの畑作農業の盛んな地だったが、空港がやってきたことで成田市の専業農家戸数は1500から300に激減した。
 市東さんは完全無農薬有機農業に取り組み続けているが、その土は何十年もかけて精魂込めて作られたものである。この裁判で工作物の収去と土地の明け渡しを求めるとは、市東さんの農業を破壊し営農の意思をくじこうとするいやがらせが目的であり、絶対に許されない。やぐら・看板は市東さんが営む農業と不可分の存在だ。一審判決を取り消し、NAAは提訴を取り下げよ!----。
 渡部裁判長は無表情を装いながら弁論の終結を宣言し、判決を9月2日として閉廷した。

明日から職場で

 弁護士会館で報告集会が伊藤信晴さんの司会で行われた。
 事務局長の葉山岳夫弁護士をはじめ圧倒的な陳述をやりぬいた弁護団がそれぞれ発言し、市東さんの農地を守りぬく決意を述べた。萩原さんは勝利感を湛えながら自らの陳述を振り返り、一層の支援を要請した。
 会場参加者からの発言で、A県の労働者が目を潤ませながら「今日たまたまこの裁判を傍聴し、みなさんの訴えが胸に迫った。市東さんのご苦労を思い、自分も力になりたいと感じた。今日体験したことを明日からの職場での実践に生かしたい」と語り、共感の温かい拍手で迎えられた。

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