明日も耕す 農業問題の今 農地取得「全国展開」へ 企業が規制緩和を要求

投稿日:

週刊『三里塚』02頁(1086号02面05)(2022/04/25)


明日も耕す 農業問題の今
 農地取得「全国展開」へ
 企業が規制緩和を要求


 ウクライナ戦争を奇貨として、岸田政権は日米安保のもとに中国侵略戦争へ向けた大軍拡と国家総動員体制づくりを進めている。これと歩調を合わせるように、企業の農地取得に向けた動きが活発になってきている。

 3月10日に開かれた国家戦略特区の諮問会議で、竹中平蔵パソナグループ会長ら民間議員5人(3月で退任)が連名で意見を提出した。兵庫県養父(やぶ)市に限って認めている企業による農地取得の特例について、全国展開への結論を今年出すよう求めるものだ。
 養父市で特例を活用したのは6社にとどまっているにもかかわらず、養父市の取り組みは成功で、本来は昨年全国展開すべきだったというのだ。そして、「全国展開が制度の本旨であり、全国展開すらできないのであれば特区制度の否定に等しい」と国家戦略特区のねらいをあけすけに語っている。
 だが、諮問会議に出された意見でも、なぜ農地の賃借ではなく取得が必要かについては言及がない。養父市の6社にしても、経営面積の9割超は特例と関係ないリースで農地を利用しており、企業の農業参入は農地の賃借で進行している。
 また、国家戦略特区ワーキンググループ(WG)が、農地所有適格法人の出資規制緩和をめぐる議論に口を出し始めた。農地を所有できる法人の出資割合(議決権)は、農業関係者以外の出資割合が半分未満に制限されている。これを農業関係者以外が過半を握ることを可能にしようという議論が規制改革推進会議で進められている。事実上、企業の農地取得解禁と同じような意味を持つ大問題だが、WG委員が国家戦略特区で実証すべきだ主張し始めた。

突出する「維新」

 他方、国会の場で目につくのが、企業の農地取得解禁を主張する日本維新の会だ。
 衆院農林水産委員会(3月24日)、参院決算委員会(3月28日)、参院農林水産委員会(4月7日、14日)などで「輸出促進や耕作放棄地解消や雇用創出のために企業参入が必要だ」「企業による農地取得の特例の全国展開が必要だ」と主張している。
 なぜ農地の取得が必要か、主張には中身がないが、執拗な繰り返しを侮ることはできない。

戦時徴発許すな

 金子原二郎農水相は企業による農地取得の全国展開に慎重な答弁を繰り返したが、政府はこの特例について要望や問題点を調査し、「秋ごろまでに結果を公表して全国に展開するか否かを判断する。必要な法案を提出する」という。
 中身は二の次で、着々と全国展開への地ならしが進められているのだ。
 特区会議諮問委員の八田達夫・アジア成長研究所理事長は、会議の中で「国力の低下は国防の面でも大きな危惧を広く抱かせる要因」と述べている。企業による農地取得の先にあるのは、国力増強であり戦時徴発だ。許すわけにはいかない。 

このエントリーをはてなブックマークに追加