明日も耕す 農業問題の今 福島復興への有機農業? 事故隠しの「みどり戦略」

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週刊『三里塚』02頁(1084号02面04)(2022/03/28)


明日も耕す 農業問題の今
 福島復興への有機農業?
 事故隠しの「みどり戦略」


 「みどりの食料システム戦略」の関連法案が3月15日、衆院本会議で審議入りした。金子原二郎農水相は、化学肥料・農薬の低減や有機農業の拡大などを推進すると表明したが、問題はその中身だ。

 「みどり戦略」関連法案の審議は後日取り上げるとして、今回はこれに先立つ衆議院予算委員会での「福島復興」をめぐる論議を紹介したい。
 3月7日の衆院予算委員会で金子農水相は、福島県の農業復興に向けて、「みどりの食料システム戦略を踏まえ、有機農業の産地創出を支援していく」と述べた。 さらに福島原発事故に伴う「風評被害の問題解決」へ「この払拭の問題を解決するためには、高付加価値生産の展開が重要であり、有機農業の拡大もまさにその取組の一つであると考えています」と答えた。

農民漁民の覚悟

 有機農業を高付加価値のブランドとして位置づけ、そのブランド力があれば「風評」など吹っ飛ぶとでも言うのか。福島の農業に対する冒とくであり、有機農業への冒とくだ。原発事故を終わったものとして責任を取ろうとしない政府の姿勢がここに表れている。
 3月11日に福島市の信夫山公園で開催された反原発福島行動22で、全国農民会議共同代表の鈴木光一郎さんは、放射能汚染水の海洋放出をめぐり「しぶきを浴びて被曝を覚悟しながら、今まで11年間も我慢してきた漁師の方々が負けるはずはありません」と心からの連帯を表明した。
 漁民がしぶきを浴びながら魚を捕ってきたように、福島の農民もまた被曝を覚悟しながらその地にとどまり、農業を続けてきたのだ。
 こうした思いに向き合わず、原発事故の責任を取らない「復興」など、県民の怒りと苦闘を踏みにじるものだ。
 復興というなら、2013年に著された『原発事故と農の復興』(小出裕章・明峯哲夫ほか著)では、有機農業技術会議が企画した討論が記されている。
 その中では、放射能汚染との苦闘を通して、放射性セシウムを強く吸着固定する「土の力」を見いだしたことが紹介されている。なくなりはしないが、思っていたほどセシウムが作物に移行しないと、真剣に現実と向き合ってわかったのだ。

「挑戦を恐れず」

 市東さんは常々、有機農業のモットーとして「うそをつかないこと」をあげる。事実を語らずして信頼など生まれるはずもない。「風評被害」と言うなら、それをつくりだしてきた責任は事実を隠蔽しようとする政府だ。
 鈴木さんは「福島県民が汚染に対して挑戦することを恐れず、未来を信じてきたから今日がある」と言う。この県民の思いを共有しよう。ペテン的「復興」のために有機農業を語ることなど許さず闘おう。「みどり戦略」で有機農業を全く別物に変えてしまうような策動を打ち砕こう。
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