天神峰農地守りぬこう 新やぐら控訴審で市東さんと専門家が証言 耕作者に無断で行われた底地買収は違法・無効だ

投稿日:

週刊『三里塚』02頁(1080号01面01)(2022/01/24)


天神峰農地守りぬこう
 新やぐら控訴審で市東さんと専門家が証言
 耕作者に無断で行われた底地買収は違法・無効だ

(写真 一日の裁判を闘った仲間が弁護士会館ロビーで総括【1月19日】)

(写真 監視やぐら)

(写真 市東さん宅前の旧小見川県道沿いの看板)


 岸田政権は「新しい資本主義の実現」を掲げながら、JRはじめ労働組合解体、非正規化を推し進めている。それと一体で、中国への排外主義を煽り、「国民の命と暮らしを守るため」には「敵基地攻撃能力」の保有=先制攻撃が必要とうそぶき、改憲・大軍拡への道を突き進んでいる。何が「新時代リアリズム外交」だ! 軍隊は決して住民を守らない。今こそ「全基地撤去・安保粉砕」を闘う沖縄と共に中国侵略戦争阻止へ立ち上がろう! 2・13国鉄集会に結集し、岸田政権を打倒しよう! 三里塚もまた改憲・戦争阻止の最前線だ。1月19日、東京高裁第2民事部(渡部勇次裁判長)で天神峰農地を守るための新やぐら控訴審の第2回が開かれた。

 この裁判は、市東孝雄さんの天神峰農地に建つ監視やぐらや看板など4つの物件(所有者はいずれも三里塚芝山連合空港反対同盟)について、成田空港会社(NAA)が「収去と土地の明け渡し」を求めて提訴したもの。一昨年8月に一審千葉地裁で不当判決が下され反対同盟が控訴した。
 この日は市東さんと3人の専門家の証人調べが行われ、NAAの主張を認めた一審判決の誤りを全面的に明らかにした。
 午前10時30分に開廷。最初に市東さんが証言台に立った。


(写真 市東孝雄さん)

 市東さんは、祖父の市太郎さんが1921年頃に成田市天神峰の地で農業を始めた経緯を語り、父・東市さん、自分と100年にわたって耕してきて、「耕作する土は、自分の身体の一部になっている。どこにでもある土とはわけが違う」と自信をもって断言した。さらに「空港反対」を掲げた反対同盟の監視やぐら・看板を農地に建てるにあたり、旧地主とは何の問題も生じなかったことを述べた。
 そして市東家に無断・秘密で、空港公団(NAAの前身)が旧地主から農地の底地を「買収した」こと、2003年に新聞に出てそれを初めて知ったことを怒りを込めて語った。「旧地主は平気な顔をして15年も地代を受け取っていました。公団に売ったのが事実なら地代を返すべきです。公団と組んで小作人をペテンにかけたのです」「父は遺言書で農地を絶対に売り渡すなと書いたほどだから、この事実を知っているわけがありません」
 このように、耕作者に無断で地主が農地を売り渡すことについて、市東さんは「絶対に無効。小作権者の権利を侵害しています。公団でもそのようなことをやったのは後にも先にもないはずです」と語気を強めた。また、転用の見込みもなく農地を15年間もそのままにしていた買収について、「農地法3条に違反し無効」と断言した。
 そして空港公団が「あらゆる意味で強制的手段を用いず話し合いで解決する」と社会的に公言したにもかかわらず、それを踏みにじりNAAがやぐら・看板の撤去を求めていることを弾劾した。
 最後に市東さんは、「反対同盟の看板ややぐらは、私の有機完全無農薬農業と三里塚産直の会の産直運動と不可分一体のものです。これを強制的に撤去することは自分の農地を取り上げることと同じです。裁判長は撤去を認めない判決を出すよう要請します」と述べた。市東さんの鮮明な訴えと揺るぎない決意に共感の拍手が大法廷に響き渡った。
 2番目に、専修大学教授(憲法学)の内藤光博さんが証言した。内藤さんは、「生存権的財産権」「営農権」が市東さんにはあると解き明かし、抵抗権の行使として「農地を守ることとやぐら・看板による意思表明は一体だ」と論じた。
 午後に移り、3番手として北海道大学教授(民法学)の吉田邦彦さんが証言した。吉田さんは「居住福祉法学」の考えを示し、「住まいは単なる商品ではない」「金銭や金目だけで解決をはかる日本のあり方は諸外国からも立ち後れている」と述べ、「(空港会社は)市東さんの身体の一部をもぎとるようなことでしか、本当に将来を語れないのか」と迫った。
 最後に埼玉大学名誉教授(経済学)の鎌倉孝夫さんが証言した。コロナ禍で航空需要が激減し、破綻が明白な成田空港の経営実態や将来を分析し、「生存・生活基盤である農業は必要不可欠。農民の耕作を破壊することは法の名に値しない。一審判決は是正されるべき」と強調した。
 閉廷後、弁護士会館のロビーで報告集会を行い、全員で農地死守をあらためて誓い合った。

このエントリーをはてなブックマークに追加