明日も耕す 農業問題の今 有機農業われわれの手で 「みどり戦略」の欺まん
週刊『三里塚』02頁(1079号02面03)(2022/01/10)
明日も耕す 農業問題の今
有機農業われわれの手で
「みどり戦略」の欺まん
政府の「みどりの食料システム戦略」では、2050年までに有機農業を全農地の25%に拡大するという。1066号でこれを「推進に名を借りた有機農業つぶし」と批判した。有機農業の推進は私たちの課題だ。
みどりの食料システム戦略(以下「みどり戦略」)では、2050年までに①農林水産業の二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロ、②有機農業を全農地の25%(100万㌶)に拡大、③化学農薬の使用量半減がうたわれている。
政府がこう言うのは「脱炭素」「持続可能」や「有機農業」をめぐる国際的な潮流・競争に追いつかなければ、農産物輸出が立ちゆかなくなるからだ。
最大の問題は、化学農薬を使わないためのイノベーションとして、ゲノム編集や遺伝子操作の一種であるRNA農薬が有機栽培に認められたら、有機農業の中身が大きく変わってしまうことだ。
そもそも有機農業は、自然の摂理と向き合い、自然との共生の中で営まれるものだ。化学農薬など禁止資材を使わない、いわゆる「ノンケミカル」に本質があるのではない。
近代農業に疑問
みどり戦略は徹底的に注視、批判、対決していかなければならない。だが、政府がみどり戦略を打ち出さざるをえないほど、世界の潮流が減化学農薬・肥料、有機農業に向かっていることも事実だ。
有機農業推進をリードする欧州のFarm to Fork(農場から食卓まで)戦略は、それまでの食と農のあり方に対する反省から生まれている。この取り組みを突き動かしてきたのは農民、市民だ。
他方、日本の有機農業は、化学肥料や農薬を多用する近代農業に疑問を抱いた人々が、それぞれの地域の自然条件に即した栽培や、販売方法を模索しながら始まった。 その後、2001年に有機基準認証制度がスタートし、06年には有機農業推進法が施行された。だが、この公的しくみで有機農業が大きく広がることはなかった。
今回のみどり戦略をきっかけに、多くの有機農業者が活発に発信している。
これからの農業は有機農業だ。政府の戦略ではなく、私たちの手で有機農業を押し広げよう。
労農連帯の力で
もちろん農薬・化学肥料を使った農業からの転換も、新たなスタートも簡単なことではない。無農薬有機栽培に先駆的に取り組んできた三里塚の産直運動は、身をもってそのことを知っている。その転換期から今日までを支えてくれたのが、消費者の理解であり信頼だ。有機農業推進の力となるのはイノベーションではない。生産者と消費者の提携、階級的に言うなら労農連帯だ。
本年は有機農業を小欄のメインテーマにしていきたいと思う。
何よりも市東さんの農地を守り抜き、三里塚の産直を押し広げよう。