明日も耕す 農業問題の今 秋田「いぶりがっこ」の危機 衛生基準で小農切り捨て

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週刊『三里塚』02頁(1078号02面04)(2022/01/01)


明日も耕す 農業問題の今
 秋田「いぶりがっこ」の危機
 衛生基準で小農切り捨て

(写真 作業小屋でつるされいぶされる「いぶりがっこ」)


 秋に大根をつるして木の煙でいぶし、塩などが入った米ぬかに40日以上漬け込む「いぶりがっこ」。この豪雪地帯の保存食をめぐって、福島の農民の方からいただいた投稿を掲載します。(見出しは編集委)

 師走になり今年もたくあん漬けの季節となった。そこで気になった記事を見つけた。「いぶりがっこ、伝統の味ピンチ 衛生基準導入、高齢農家『何年できるか』 秋田」(12/6配信 時事ドットコム)だ。
 「秋田県の郷土漬物『いぶりがっこ』がピンチに直面している。昔ながらの製法を代々受け継ぐ農家は農閑期に小屋で作っているが、改正食品衛生法の施行で許可が必要となり、衛生基準を満たすには多額の改修費が必要になるためだ。作り手は零細の高齢農家が多く、『あと何年やれるのか』と諦めの声が広がっている」(以上引用)
 全国で浅漬けなどの食中毒が相次ぎ、国は6月施行の改正食品衛生法で、漬物製造業を営業許可の取得が必要な業種に追加した。国際標準に沿った衛生管理を義務付け、専用の製造場所を設けるよう規定した。
 秋田県内で漬物による食中毒発生例はない。だが、経過措置が3年間あるものの、改正法の施行によって、小屋の天井や壁などを改修しなければ販売用として製造できなくなる。

規制は誰のため

 「経済成長のためには規制緩和こそが必要」などと言いながら、種子法廃止・種苗法改悪など農民が生きるために必要な規制は撤廃したにもかかわらず、農民が生きる一筋の光ともいえるようないぶりがっこ作りは規制の網をかけ工場生産に道を開く。農家のささやかな生業を叩きつぶしておいて「魅力的な農業」や「担い手不足の解消」もあるはずはない。
 政府の一見「安全安心のため」のような規制も、裏を返せば新自由主義でしかない。そうでないというなら、なぜ福島原発事故の汚染水を海洋放出するのか。結局のところ権力者・資本家にとっての「安全安心」でしかないことは明らかだ。

政府は命守らず

 ここから見えてくるのは、政府は労働者・農民・市民の命を守ってなどくれないという事だ。今ほど「生きさせろ」の闘いが必要な時はないだろう。種子も苗も、そして「いぶりがっこ」も闘い取ることなしに守れはしない。「決まったこと」とおとなしくしていては座して死を待つよりほかないし、権力との対決を恐れず闘うことが勝利の道だろう。
 三里塚の半世紀を超える闘いがそのことを雄弁に語っている。市東さんをはじめとした反対同盟の闘う姿勢こそ、我々が持つべきものだと思う。今こそ労農学の団結の力で闘いぬき勝利しよう。
(福島農民 柳沢幹男)

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