今期赤字ANA1000億円、JAL1460億円 成田機能強化白紙撤回を
週刊『三里塚』02頁(1075号02面02)(2021/11/08)
今期赤字ANA1000億円、JAL1460億円
成田機能強化白紙撤回を
ANAホールディングスは10月29日、22年3月期の連結最終損益1000億円赤字(前期は4046億円の赤字)との予想を発表した。これで、ANAは2期連続の赤字となる。
中でも夏季需要の落ち込みは深刻だ。7〜9月の旅客数は、19年比で国内線が7割減、国際線で9割減。これで必達目標としてきた今期の黒字転換は見込めなくなった。
ANAは、10月にも国内線46路線の1564便を追加で減便した。緊急事態宣言が解除されたとはいえ、ANA自体も本格的な需要回復には時間がかかると見通している。すでに有利子負債は、約1兆6千億円と2年前の2倍に膨らんでいる。9月末時点の自己資本比率は26%と2年で15ポイント低下した。今後も、巨額の借金返済に首を絞められる。
JALでも、今期最終赤字は1460億円だ。21年4〜9月期の連結決算は、売上高が前年同期比49%増の2906億円とはいえ、最終損益が1049億円の赤字(前年同期は1612億円の赤字)だった。
決算発表では、どちらも来年1〜3月期には国内線の旅客需要が9割まで回復し、資金流入に転じ、23年度期に黒字への転換を目指すとしている。だがこれは、希望的観測でしかない。
需要は回復せず
国際航空運送協会(IATA)は10月4日の年次総会で、22年も19年比で4割減の水準にとどまるとの需要見通しを示した。とくに厳しいのがアジア路線としている。IATAの見通しではアジア域内は22年になっても19年比89%減にとどまる。米デルタ航空のエド・バスティアンCEO(最高経営責任者)は「アジア路線は今後12カ月はさえないままだろう」と指摘する。このように来年前期にANA、JALに資金が流入するなど夢物語であり、逆に両社の経営破綻が現実化する情勢に入ることになるだろう。IATAは、総じて22年世界航空各社の業績を計116億ドル(約1兆2800億円)の赤字とみており、20〜22年の累計赤字は2000億ドルを超える。天文学的な赤字だ。この航空大不況は、生き残りをかけた全世界的な航空業界の競争と再編を激化させる。
成田の年間発着回数を50万回化する根拠は完全に崩れている。今こそ機能強化粉砕へ闘おう。
航空業界の危機に駆られた反動攻撃の一つが入国規制の緩和である。
政府は11月8日からビジネス目的の短期滞在や留学生、技能実習生について新規入国を認め、ビジネス往来を円滑にするため入国後の待機措置の日数も短縮すると発表した。待機期間を終えてPCR検査などで陰性を証明すれば、受け入れ先の企業などが行動管理をする条件で外出できるようになるという。これは実質的には水際対策の放棄に他ならない。
「緩和」叫ぶ田村
その先導役が、NAAの田村明比古社長だった。「日本が隔離措置を緩めないため、向こうも緩めてくれない。日本がこのままであると、遅れてしまうのではないかと懸念している」と入国制限の緩和を主張した。周知のように、新型コロナ感染拡大の要因の一つが空港検疫の欠陥であった。これを緩めたらどうなるのか、火を見るより明らかである。11月現在でも成田空港入国者「病原体保有者」(厚生労働省の発表)は連日数名ずつ報告されている。その多くが無症状だ。NAA田村は、新型コロナ感染拡大の責任をほおかむりし、国際便の拡大を求めているが、これは自らの墓穴を広げるものになることは必至だ。