明日も耕す 農業問題の今 議事録黒塗りの戦略特区 農地への規制緩和許すな

週刊『三里塚』02頁(1069号02面03)(2021/08/09)


明日も耕す 農業問題の今
 議事録黒塗りの戦略特区
 農地への規制緩和許すな


 国家戦略特区をめぐって衝撃的な記事が7月22日付日本農業新聞に掲載された(写真)。同紙が求めた特区ワーキンググループ(WG)の議事録の開示請求に対して、所管する内閣府はほぼ全て黒塗りで応じたのだ。

 問題の議事録は、2014年2月17日に開かれたWGの議事録だ。この日のWGから兵庫県養父(やぶ)市が国家戦略特区に指定される道筋ができていったが、内容は非公表となっていた。
 議事録と議事要旨、配布資料の開示請求に対し、「協議・検討に直接関係する部分」などは不開示となり、議事概要は開会・閉会のあいさつなどを除きほぼ全て黒塗りの状態。配布資料も全面的に黒塗りで、出席者の発言や提案の具体的な内容は一切確認できなかったというのだ。
 内閣府は不開示の理由について、「非公開を前提の審議」であり、特定の者に不利益を及ぼす恐れがあるからなどと説明する。企業の農地取得に向けて開示できないようなホンネがあけすけに語られたであろうことは想像に難くない。
 実に胡散(うさん)臭い企業の農地取得の特例だが、養父市での実績がほとんどないにもかかわらず、先の通常国会では期限を2021年8月末から2年間延長する改正法が成立した。

成田特区も推進

 WGの委員らが求めた全国展開は、特例の必要性や効果を疑問視する声が与野党から相次ぎ、「政府が2021年度中に全国でニーズや問題点を調査し可否を調整する」として結論が先送りされた。しかし、WGの委員らはなお要求をやめない。特区に指定された区域の首長らが参加する区域会議の合同会議(6月7日)では、全国展開を念頭に置いたWG委員の発言が相次いだ。
 この時の合同会議では、さらに注視すべきことが話題になっている。
 成田市の市長代理で出席した関根賢次副市長は、1月に千葉県が成田空港周辺9市町を対象とした国家戦略特区の指定に向けて提案を行ったことに触れ、「成田空港の機能強化に関連した土地利用規制の規制緩和に取り組む」と発言。これに「農業的土地利用から必要性に応じた事業転換についても努力をしていくことが必要」といった議論がなされている。
 どういうことか。千葉県の提案に即して見てみよう。提案では現状を「空港を核とした最適な開発を行う必要がある。特に、〝インターチェンジ〟等といった利便性の高いエリアについては、農地以外に活用することでエリア最適化につながる可能性があるものの、現行法上、優良農地については開発が困難であり、開発が進んでいない」とする。
 そこで国家戦略特区にして現行法を飛び越え、「ここはインターチェンジを造った方がいいから農地転用しても良い」「物流基地の土地が足りないから農地転用しても良い」ということを認めろというのだ。

新たな農地強奪

 養父市の場合は企業の農地取得だが、成田の戦略特区は農地転用の緩和であり、国策のためなら、企業のためなら農地は守らなくて良いとするもので、市東さんの農地問題とも重なり、もっと問題だ。
 そして先のWG委員の要求にもあるとおり、国家戦略特区は全国に広げることを目的とする。これがまかり通れば、成田だけの問題ではなくなるのだ。断じて見過ごすことはできない。
 成田の戦略特区をめぐっては、地元商工業者らが集まる「成田空港と地域の繁栄を目指す有志の会」が実現への提言書を空港会社や千葉県に提出するなど動きが始まっている。
 国家戦略特区による農地強奪、農業破壊を許すな!
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