2021年版防衛白書を弾劾する 中国との実戦を想定・準備 台湾情勢を初明記 「島しょ防衛」から全面戦争へ
2021年版防衛白書を弾劾する
中国との実戦を想定・準備
台湾情勢を初明記 「島しょ防衛」から全面戦争へ
米中の激突は不可避と分析
21年版の防衛白書は、米日帝による対中国政策の歴史的転換と中国侵略戦争の切迫性を受け、激しい戦争衝動をむき出しにしている。これまでと異なり表紙に墨絵の騎馬武者のイラストを採用、勇ましさと武力をアピールし、自衛隊を戦闘集団として印象付ける。
白書の特徴の第一は、台湾情勢を「わが国としても一層緊張感を持って注視していく必要がある」と指摘し、台湾情勢の安定が日本の安全保障に重要だと明記した。台湾を日本の安全保障に直接結び付けたのは初めてである。4月日米首脳会談の共同宣言において「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸関係の平和的解決を促す」としたものよりも、はるかに踏み込んだものである。
第二に、米帝の対中国政策の転換を全面的に対象化している。通常、防衛白書の記述の対象期間は20年度が終わる3月末までだが、今回は4月に行われたバイデン米大統領と菅首相の日米首脳会談、日米「2+2」、日米防衛相会談なども取り上げた。
かつ今回の白書は、米中関係を特集する項目を初めて設け、「(両国の)戦略的競争が一層顕在化している」と分析し、「バイデン政権が軍事面において台湾を支援する姿勢を鮮明にしていくなか......中国が、米国の姿勢に妥協する可能性は低い」として、米中の激突が不可避と分析した。それを踏まえて、日帝の政策の政治的・軍事的軸を米中対立に置くことを鮮明にさせた。
戦争遂行能力の拡充を追求
第三に、米中戦争への日帝の参戦を具体的に想定、日米安保の実戦化にさらに踏み込んでいる。
菅は4月日米会談で、「台湾有事が起きれば、安全保障関連法に定めた存立危機事態や重要影響事態に当たる可能性がある。その場合は米国を支援する用意がある」とした。
「存立危機事態」とは、「密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」であり、集団的自衛権行使が可能となる。白書では、全面戦争を想定した島しょ防衛やミサイル攻撃の作戦を練り上げている。
例を挙げると、敵の上陸を阻止する「水陸機動団」の拡充(オスプレイの佐賀空港基地化のこと)や、海上輸送部隊の新設。護衛艦などの新造。国産の長射程ミサイル開発。陸上自衛隊「12式地対艦誘導弾」の射程延伸。
地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の計画停止、代替となる艦船導入も記載(海上運用で南西諸島防衛にも活用)。艦艇からの飛行が可能な「F35B」の購入と「いずも」型護衛艦の「空母化」改修。現在の主力戦闘機「F15」も電子戦に対応するよう改修、など独自の戦争遂行能力の拡充を追求している。
第四に、グレーゾーン事態への対処を強調している。「グレーゾーン事態」は相手が武力攻撃にあたらない範囲で現状変更を試みること、具体的には、中国が海軍ではなく海警局を使って「尖閣諸島」に上陸してくる事態などを想定している。ほかにも、武装した工作員の破壊活動などと、ゲリラ戦的活動に対する防衛強化である。しかし、小さな火点から全面戦争に発展することがあるように、「グレーゾーン事態」とは「有事」に発展するものとして、戦争情勢の一部なのだ。米中戦争情勢の中、日帝・自衛隊は、「グレーンゾーン事態」を利用して、具体的な戦闘突入の準備を進めている。
防衛費増大を声高に求める
第五に、大軍拡、防衛予算の全面的増大だ。
21年度の防衛費は9年連続増えた。20年度の日本の防衛費はGDP比で0・94%となり、岸信夫防衛相は来年度に1%を超える予算要求するつもりだ。白書は、これに合わせて防衛費の増大要求をアピールする。さしあたり、従来通り米国・ロシア・中国などの主要国と比較し「対GDP比は最も低い」という理由付けであるが、今度の白書では、韓国の防衛予算の増大をことさらに取り上げている。白書は、「日本の防衛費は、18年に韓国にも逆転、購買力平価換算で、日本が494億ドルだったのに対し、韓国は506億ドルだった。25年には韓国の国防費は日本の1・5倍に膨らむ見通し」とあおっている。
防衛計画の大綱や中期防衛力整備計画は18年に策定。日帝自衛隊は、それをはるかに上回る戦力が必要と、台湾有事をテコに大軍拡へ、歯止めを外そうとしている。
米日帝の中国侵略戦争の発動は、全世界を核戦争の惨禍にたたき込む。絶対に阻止しよう。反戦闘争の砦=三里塚闘争に勝利し、改憲・戦争の菅政権を打倒しよう。