明日も耕す 農業問題の今 コロナに乗じた社会改造 「骨太の方針」の正体暴く
週刊『三里塚』02頁(1068号02面04)(2021/07/26)
明日も耕す 農業問題の今
コロナに乗じた社会改造
「骨太の方針」の正体暴く
6月18日に閣議決定された「骨太の方針」について、前号では「農業においては農民不在だ」と批判した。だが、その中身はこの一言で済ませられるものではない。今号では「骨太の方針」そのものを取り上げよう。
「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2021」は、サブタイトルに「日本の未来を拓く4つの原動力〜グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策〜」を掲げ、「ポストコロナの経済社会のビジョン」を示すという。
農業については、4つの原動力のうちの「活力ある地方創り」の中で、「輸出を始めとした農林水産業の成長産業化」として語られている。「人口減少に伴う国内市場縮小や農林漁業者の減少、気候変動等に対応するため、農林水産業全般にわたる改革を力強く進め、成長産業としつつ、所得の向上、活力ある農山漁村の実現、食料安全保障の確立を図る」
そのためにどうするのか。「2030年までに5兆円」という輸出戦略を推し進め、「みどりの食料システム戦略」の目標達成に向けて革新的技術・生産体系の開発と国際ルールづくりに取り組む。スマート農業を推進し、農地の集約と多様な人材確保で新たな農業・農村ビジネス展開を大胆に進めるという。
社会改造狙い
今ある農業を大事にしようなどという発想はどこにもない。企業の農業参入を推し進め、今の日本農業を別物につくりかえるに等しい話だ。重要なことは、こうした施策がどのような全体像の中で行われているかということだ。
あらためて「骨太の方針」を総論的に見ると、脱炭素やデジタル化など世界的な変化に対応して「持続的な成長基盤を作る」ために、「グリーン、デジタル、人材活躍といった動きを個人や家庭、企業の意識や行動などミクロレベルで浸透させ」、社会全体の仕組み・構造を転換するというのだ。
つまりはコロナに乗じた一大社会改造計画だ。コロナ×大恐慌の危機に追いつめられながらも、資本家が利益を追い続けるために、支配・管理が徹底的に強化され、私たちは「人材」に落とし込められる。これは戦争国家化につながるものだ。
「超管理社会」へ
わかりやすい話をピックアップしてみよう。「誰一人として取り残さない包摂的な社会」と称して、たとえば「マイナンバー制度を活用し、リアルタイムで世帯や福祉サービスの利用状況、所得等の情報を把握」し、支援を適時適切に提供するというのだ。また、「外国人材の受入れ・共生」のために在留カードとマイナンバーカードの一体化を推し進めるという。誰がこんな社会を望むというのか!
こうした改造計画の下で「成長産業化」をめざす農業に農民の未来があるわけがない。菅の暴挙はコロナ下の五輪強行にとどまらない。生きるために今すぐ打倒しよう。