明日も耕す 農業問題の今 米価下落が農家を直撃 「米余り」の真相を問う

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週刊『三里塚』02頁(1067号02面05)(2021/07/12)


明日も耕す 農業問題の今
 米価下落が農家を直撃
 「米余り」の真相を問う


 農水省は米の需給バランスを保つために、2020年産の主食用米の作付けを56万㌧(のちに36万㌧に修正)減らせと削減・転換を求めている(本紙1057号小欄)。だが米価の下落で米作をめぐる状況は深刻だ。
 農水省は「6・7万㌶の作付け減が必要」と言うが、実際の取り組みは3・7万㌶で、「米余り」解消の見通しはない。そこへ今年も続くコロナ禍による需要減で、2020年産米の価格が下落している。
 20年産米の5月の産地と卸間の取引価格は60㌔当たりの全銘柄平均1万4611円で、昨年9月より500円以上下がった(例年は年間で大きな変動はない)。
 この事態に、日本農業新聞の論説も「瀬戸際の水田農業 政府の危機対応を問う」(6月22日)と危機感を表した。

MA米こそ問題

 だが、この「米余り」の構造について、全国農民会議の機関誌『ゆい』第52号で事務局長の秋山和雄さんは「90万㌧の輸入をなくせばコメ余り解消」と喝破している。
 ミニマムアクセス米(MA米)は年77万㌧(うち主食用に使われるSBS米は10万㌧)、TPPによる輸入枠12万㌧を合計すれば、年間90万㌧輸入している。「56万㌧が過剰というなら、この90万㌧の輸入を抜きに考えられないはずだ」と強調する。
 MA米は、1993年のガット・ウルグアイラウンドで、米への関税を延期する代償として輸入枠を受け入れたものだ。「義務量」ではないのに「国家貿易品目として国が輸入を行う」として、毎年必ず100%輸入している。貿易立国のための「米余り」なのだ。

商社が米を支配

 米価の低下は「農家の手取りを直撃し補償もない」(秋山さん)。他方、20年産米の米価は下がってきているが、小売価格がそんなに下がっていない。なぜか。
 元立教大学教授の石原健二さんは「総合商社が卸を傘下にしているから」だと言う(農民新聞2195号より)。
 石原さんによれば、食管法廃止後、商社は既存卸への資本参加などにより、卸との関係を強めている。「三菱商事は神明やミツハシ、伊藤忠は第一食糧、三井物産は三井食品、トヨタ通商は中外食糧を傘下にしている」(石原さん)。
 量販店はどこも大手商社の下にあり、米の価格を決めるのは商社で、需給で決まっているわけではない。生産者には安く、消費者には高く、そして商社の利益は大きい。かくのごとく、米作危機の背景にあるのは資本の金もうけだ。
 6月18日に閣議決定された「骨太の方針」でも農業について「輸出を始めとした農林水産業の成長産業化」がうたわれ、農民不在の言葉が踊る。
 コロナ×大恐慌の危機に追いつめられ、新自由主義を一層加速する菅政権の下では、農民はもはや生きていけない。それは労働者も同じだ。労農連帯で菅政権を倒そう。
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