明日も耕す 農業問題の今 RCEPはアジア侵略だ ブロック化から戦争へ
週刊『三里塚』02頁(1063号02面04)(2021/05/10)
明日も耕す 農業問題の今
RCEPはアジア侵略だ
ブロック化から戦争へ
日中韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)など15カ国による地域包括的経済連携(RCEP)協定が4月28日、参院本会議で承認され、日本の批准が決まった。あらためてその意味するところを考えてみたい。
RCEP(アールセップ)は、参加国合計の人口と国内総生産(GDP)がいずれも世界全体の3割に上る。日本にとっては、中国や韓国と初めての自由貿易協定となる。自動車をはじめ工業製品や農産品の関税撤廃、電子商取引、知的財産権の保護ルールなど幅広い分野が対象だ。
農水省は、「聖域」とするコメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖の重要5項目を関税削減の対象から除外できたので、農林水産業への特段の影響はないという。
だが、鈴木宣弘東京大学教授の試算では、農業生産の減少額は5600億円強にのぼる。TPP11の1兆2600億円の半分程度とはいえ、相当な損失額だ。なかでも野菜・果樹の損失が860億円と農業部門の中で最も大きく、TPP11での損失250億円の3・5倍になると見込まれる。
「勢力圏化」進む
他方、突出して利益が増えるのが自動車分野で、RCEPではTPP11よりもさらに大きく、約3兆円の生産額増加が見込まれる。日本農業より問題なのは、本紙1035号の小欄でも言及したように、ASEAN諸国の労働者・農民への影響だ。
鈴木教授の試算では、日本の国内総生産(GDP)増加率が2・95%と突出して大きく、中国・韓国もわずかに増加するが、ASEANとオセアニア諸国はGDPが減少すると想定される。
他の様々な影響試算を見てもASEANにとっては輸入が増え、輸出が減るという構造で、そのメリットの多くは日本企業が得る。
つまり、農業を犠牲にして自動車が利益を得る構造の上に、日本がASEANなどの犠牲の上に利益を得るものなのだ。
大型貿易協定の締結は、参加国にとっては経済連携の強化となるが、同時に非参加国を排除して経済のブロック化を進めるものとなる。日本にとってのRCEPは、本質的にアジア侵略・勢力圏化だ。
国際連帯強化を
米中激突が日を追うごとに激しさを増しているが、他方で中国との経済関係は、菅政権にとってますます死活的になっている。バイデンの対中対決政策に全面協力しながらも、中国との経済関係を何とか維持するという、危機的で矛盾に満ちた政策を取り続けるしかない。それがRCEPだ。
菅政権はぎりぎりまでこの政策を続けながら、最後は日米同盟にかけ、対中国侵略戦争に参戦するという選択をして改憲・戦争への道を進んでいるのだ。
各国の労働者民衆の怒りは、これからますます爆発する。国際連帯を強化して闘おう。菅政権を打倒しよう。