明日も耕す 農業問題の今 工場型畜産に未来はない 大量生産・大量消費の破綻
週刊『三里塚』02頁(1062号02面05)(2021/04/26)
明日も耕す 農業問題の今
工場型畜産に未来はない
大量生産・大量消費の破綻
前号まで、鳥インフルエンザからアニマルウェルフェアというテーマを取り上げてきた。鶏のケージ飼いのような高密度・大規模な飼育=工場型畜産(factory farming)は何をもたらしてきたのか。
この冬、鳥インフルエンザに感染した採卵鶏は全てケージ飼いだった。殺処分は3月現在で885万6975羽に及ぶ。 海外からの伝染については渡り鳥の存在も指摘されるが、近年頻発する強毒な高病原性鳥インフルエンザの大量発生は、大規模・高密度の飼育と無関係ではない。
集団的飼育場では飼育されている鶏の免疫力が低い上に、宿主が多ければ多いだけウイルスは様々な変異を起こすからだ。
高密度の飼育を成り立たせるために、いま抗生物質の3分の2は畜産、水産で使われているという。「鶏の死亡率はケージ飼いが最も高い」とか、「日本の鶏肉の半分はサルモネラ菌に汚染されている」など、不健全さを伝える話は枚挙に暇がない。
環境破壊の要因
だが、問題は飼育されている家畜の健全性にとどまらない。鶏や豚に与えられる濃厚飼料=大豆が森林を破壊しているのだ。
世界の農地の75〜80%が畜産動物のために使われていて、アマゾン地域の森林破壊の原因は、その91%が畜産業のためだ。畜産のために大量に使われる水や穀物に比べれば、生み出される畜産物は少ない。
また、畜産が起源の地球温暖化ガスは全体の14・5%に及び、交通機関の排出量よりも多い。
アグリビジネスが主導する工業的な大量生産・大量消費のあり方が気候変動や環境破壊の要因となっている。
新型コロナなどのウイルスも、無理な農地拡大によって原生林を含む森林を破壊したことで家畜や人間社会に入り込んだことが感染爆発の背景にある。海外では工場型畜産がコロナ発生の原因としてやり玉に挙げられている(吉田太郎著『コロナ後の食と農』)。
他方、多数の労働者を1カ所に集めて大量の家畜を「処理」する畜産工場が、アメリカをはじめ食肉生産の主流となっているが、コロナ危機ではまさにこの工場が感染の温床になった(農民運動全国連合会編著『国連家族農業10年』)。
工場型畜産は、劣悪な衛生環境下での低賃金長時間労働の問題でもある。
資本主義を倒せ
大量生産・大量消費のための工場型畜産は地球的規模の問題であり、そこに未来はない。だが、アニマルウェルフェアも資本主義のもとでは、元農相の汚職事件にも見られるように、競争のための基準づくりやペテン的な問題のすり替えなど、必ず金もうけにつながっていく。脱炭素もアニマルウェルフェアも本当に成し遂げようとするなら、資本主義を打倒するしかないのだ。
この道を進もう。