明日も耕す 農業問題の今 菅政権が新たな「食料戦略」 農民不在、企業参入促す
週刊『三里塚』02頁(1060号02面06)(2021/03/22)
明日も耕す 農業問題の今
菅政権が新たな「食料戦略」
農民不在、企業参入促す
農林水産省は3月5日、「みどりの食料システム戦略」の中間とりまとめ案を発表した。気候変動や様々なリスクの中で「食料・農林水産業の生産力向上」と「持続可能な食料供給システムを構築」するという。
みどりの食料システム戦略とはどういうものか。
2050年までに有機農業の面積を全耕地の25%にあたる100万㌶に増やすことや、化石燃料などを原料とする化学農薬を5割、化学肥料3割、使用量を減らすといった技術革新により、生産性向上と持続可能性のある農業の両立を目指すとされている。
たとえば、除草を自動化できる田畑の整備や病害虫に強い品種の育成などで、化学肥料や農薬を使わない有機農業の面積を大幅に広げるという。
背景にあるのは国際的な動きだ。
乗り遅れるな!
EUは、2030年までに化学農薬使用量を半減し、有機農業を全農地の25%にすることを目標とした「ファームtoフォーク戦略」(農場から食卓まで戦略)を策定した。9月には、今後の貿易ルールに影響を及ぼすであろう「国連食料システムサミット」も開かれる。農業分野でも「脱炭素化」や「持続可能」なあり方を目指す世界的な潮流があり、欧米の目標は、将来的な国際標準となる可能性がある。菅政権は「農産物輸出の拡大を目指す上でも同様の戦略策定に乗り遅れるわけにはいかなかった」(日本農業新聞)のだ。
掲げた目標は立派だが、日本の有機農地は現在0・5%(2万3500㌶)。EUは現在7%で、大きな開きがある。目標値をそろえたに過ぎず、それも前記の理由があるからだ。
「AIで解決」?
しかし、この戦略の最大の問題点は、農民の姿が見えないことだ。同戦略は農林水産業の課題として、大規模自然災害・地球温暖化とともに、「生産者の減少等の生産基盤の脆弱化・地域コミュニティの衰退」を同列に語っている。そして、この課題を克服するために「新たな技術体系の確立と更なるイノベーションの創造により、我が国の食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立を実現する」としている。
イノベーション、スマート技術といった言葉を並べ立て、これまでの農政を棚に上げて「高齢化、人手不足だからAIで解決する」というのだ。企業の農業参入を加速させるものに他ならない。
だが、枝葉の部分では、農民の声に耳を傾けざるを得なくなっている。環境危機など資本主義そのものが問題となる中で、金もうけ、企業参入だけでは立ちゆかない。農業のあり方が見直される時代であり、変革のチャンスだ。
ペテン的な弥縫策(びほうさく)を許さず、農民無視、輸出拡大第一で突き進む菅農政そのものを打ち砕こう。