団結街道
週刊『三里塚』02頁(1059号01面06)(2021/03/08)
団結街道
遅ればせながら漫画「鬼滅の刃」を完読した▼元は人間だった人喰い鬼を狩る政府非公認の集団である鬼殺隊。その一員となった主人公・竈門炭治郎(かまどたんじろう)が仲間と共に鬼という理不尽、不条理に人間性をかけて立ち向かうというストーリーだ▼週刊少年ジャンプのコンセプトは「努力、友情、勝利」であり、「鬼滅」もこの範疇(はんちゅう)に入る。だが、これまでの作品と異なるのは、「強さのインフレ」に終止符を打った点だ▼作者の吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)は、「敵より強くなる」「競争に勝つ」という価値観に対して明確にNOを突きつけている。「鬼滅」が多くの人に支持されているのは、新自由主義的な「弱肉強食」は、自然の節理ではないというメッセージにあると思う▼吾峠は巧みな設定とストーリー展開で読者を説得する。重要なのは女性キャラクターの存在だ。炭治郎の妹で鬼にされた禰豆子(ねずこ)。鬼であり医者でもある珠代(たまよ)。鬼の首を斬るのではなく、毒で倒す鬼殺隊の柱(リーダー)の一人である胡蝶(こちょう)しのぶ……▼ネタばれになるので詳述は控えるが、最終巻では、人間性を失ってまで自分が強くなって敵に勝つ道ではなく、敵を弱らせて勝つ道が示される。そして、それを実行したのが女性たちであったことが少年ジャンプ史上に画期をなす革命的転換だ。3・8国際女性デー行動に立ち上がろう。