千葉県が「国家戦略特区」提案 住民追い出しと農業破壊だ

週刊『三里塚』02頁(1058号01面03)(2021/02/22)


千葉県が「国家戦略特区」提案
 住民追い出しと農業破壊だ

(写真 「世界と戦う」と、成田周辺への特区拡大を提案)

(写真 自民党の二階俊博幹事長【中】に支援を求める森田健作千葉県知事=左から2人目【1月25日】)


 1月21日、千葉県は「成田空港周辺9市町の国家戦略特区区域指定に向けた提案」を内閣府に行った。
 「成田空港を航空貨物の東アジアの拠点へ」と題する提案を徹底的に弾劾しよう。空港周辺の9市町の広範囲に民間資本を導入した貨物基地等開発を目的に、農地や外国人労働者に対する規制を緩和させようとするものだ。千葉県と周辺市町は、空港機能強化決定に合わせて「成田空港周辺の地域づくりに関する『実施プラン』」を20年3月に策定した。今回、それをさらに進め、貨物空港化へ向けて空港周辺地域の住民追い出し、農業破壊を露骨に表明した。

物流に延命の道求め貨物空港化

 主要な内容は、①成田空港周辺9市町のインターチェンジや空港ゲート等、交通の要衝周辺では土地利用規制を緩和し、物流施設等の整備を促進する、②在留資格「特定技能」に新たに倉庫業を位置づけ、外国人材を活用するというものだ。
 特区提案の第一の特徴は、航空バブルの崩壊によって破綻しつつある成田空港の機能強化計画を後押しし、「年間発着枠を現在の30万回から50万回に」「旅客数が約7500万人、貨物量が約300万㌧に増加」なるデマを繰り返していることである。
 第二の特徴は、「羽田空港はより旅客に特化」と言って、成田空港を存続させる条件として貨物空港化を追認し、それによる利権獲得と開発利益の獲得に舵を切った点である。羽田の国際化に抵抗し、「国際空港」成田の利権に固執してきた千葉県や地元利権団体の新たなうごめきだ。
 第三の特徴は、物流施設の建設を最優先に空港直近はもとより、北総・東総の二つの高速道路のインターチェンジ周辺18カ所、空港を中心に30㌔を超える地域の乱開発計画だ。空港機能強化を軸にした住民無視、農民無視の開発だ。

人手不足だから「外国人を活用」

 第四の特徴は、規制撤廃で資本に最大限の自由を与える新自由主義政策だ。
 千葉県の提案内容を見ると、彼らの言うところの機能強化のための地域づくり第一の課題は「成田空港周辺は、農業振興地域整備法や農地法により土地利用の転換が困難な農地が広がっているため、物流施設等の立地が進まない」、その解決のため「農地転用の緩和が必要」と言っている。
 さらに第二の課題として「地域の人口は減少傾向にあり、航空貨物を中心とした物流業界では、人手不足が顕在化している」として、「外国人を利用せよ」と提案している。
 怒りなしに読むことができない。北総地域は、首都圏における農産物供給産地であり、農業の先進地域であった。そこに空港を持ってきたのは誰なのか。成田空港周辺が農業適地であることは、いまだに変わらない。騒音公害による追い出しや乱開発による影響は多大であったものの、今もっても広範な地域が農業振興地域であり、農地の保全が優先されていることは、住民にとっては自明である。また、「地域の人口が減少」と言うが、空港建設と騒音による生活破壊によって、住民が住めなくなり、移転を余儀なくされたのは空港のためだった。機能強化は、さらに廃村化をすすめ現実のものにする。この現実を無視して、人手不足だから「外国人材の活用」と称して在留資格「特定技能」を拡大することなど許されない。農地法や入管法の改悪につながる新自由主義政策、規制撤廃攻撃の激化である。
 労働者農民の権利と生活を守るために国家戦略特区攻撃と対決しよう。

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