ANA5100億円、JAL3000億円 航空会社が最悪の赤字決算に 旅客需要消失、路線廃止、事業縮小止まらず 成田拠点政策は破綻、「機能強化」無意味に
週刊『三里塚』02頁(1057号01面04)(2021/02/08)
ANA5100億円、JAL3000億円
航空会社が最悪の赤字決算に
旅客需要消失、路線廃止、事業縮小止まらず
成田拠点政策は破綻、「機能強化」無意味に
(写真 相次ぐ減便・運休で行き場をなくし、駐機場に滞留するJALとANAの航空機)
全日空(ANA)と日本航空(JAL)の 4〜12月期決算発表が1月29日(ANA)、2月1日(JAL)に行われた。ANAホールディングス(HD)の20年4〜12月期の売上高は前年同期比66・7%減、純損益が3095億円の赤字。JALは2127億円の営業赤字となった。さらに21年3月通期決算を、ANAHDは純損益を5100億円、JALが3000億円の最終赤字を見込んだ。
売上高は両社とも前年同期比7割ほど減り、ANAHDは同期間として最大の営業赤字、JALは12年の再上場後初めて営業赤字となる。
国際線の9割減
国際線旅客数は12月に9割以上減り(前年同月比93%減の5万7030人)、年末年始の国内線旅客数は前年比6割減。菅政権が年末年始のコロナ対策を自粛要請程度の呼びかけにしたにもかかわらず、航空需要は回復しなかった。
両社とも2月以降の追加減便も決めている。JALは28日、2月1日〜4月15日の国際線で10路線848便を追加で減便すると発表した。期間中の減便率は75〜78%となる。いよいよ路線廃止・事業縮小が現実のものになっている。
今回の決算と通期見通しから分かることは、両社の経営危機と経営再編の不可避化である。
第一に、財務の悪化である。ANAの財務状態は、自己資本比率が9・5ポイント減の31・9%、有利子負債残高は8428億円増の1兆6885億円という債務の巨大さだ。ポイントを使った通販などの新たな事業展開ですぐに利益は上がらない。航空事業の本業で利益を得られない現状が続けば、負債が資産を上回る債務超過に陥らざるを得ない。
ANAは、20年10月に銀行団から総額4000億円の劣後ローンによる借り入れを行い、現預金は20年9月末時点で4522億円である。しかしANAの現金消失(「固定費」「債務返済」など)は月423億円とされ、単純な「キャッシュ余命」は11カ月と計算される。今夏までに営業黒字が積み上げられなければ財務はさらに悪化し、いよいよ土壇場に立たされる。
コロナによる新常態ともいうべき生活様式や意識の変化が追い打ちをかけている。出張などビジネス便は、単価が高く、キャリア本体の収益の柱に据えられていた。一つの便で、ビジネスクラスとエコノミークラスの割合を素早く的確に予測し、チケットを販売するのが航空会社の錬金術の一つだった。デルタ航空の顧客調査では、大企業では在宅勤務の長期化やオンライン会議への切り替えが進み、コロナ前の水準に「戻る」と答えたのは22年が4割で、1割弱は「戻らない」と答えた。ビジネス客の減少は、かりに一般旅客数が増加したとしても、それを補填するものとはならない。
居直る田村社長
ANAの経営危機の顕在化による特徴の第二の点は、ANAの成田拠点政策の破綻である。昨年4月から10月の旅客数実績から分析したANA・JAL国内路線「廃止危険度」ランキング(「週刊ダイアモンド」作成)の10位中、9番目までが成田便である。そのうち、ANAが7便(札幌・福岡・大阪・仙台・中部・新潟・那覇)であり、昨年4〜10月の搭乗率は、1割前後、仙台・新潟は3%台という惨憺(さんたん)たるありさまだ。便によっては、乗客数より運航関係者の方が多いという事態だ。飛ばせば飛ばすほど赤字で、10月はすべての路線で全面運休した。2月ダイヤも基本が運休で、再開の見通しはない。JALの経営破綻を好機に拡大路線を突き進んだANAは、成田の国際便からの乗り継ぎを前提とした地方便フライトを見込んだ戦略を立てていた。成田国際便がなければ、成田地方便は不要となり、さらに国際便も羽田に集約すれば成田の拠点を維持する必要もなくなる。成田はコストカットの対象だ。
ANAの成田国際便から乗り継ぎを前提とした地方便フライト戦略は、同時にインバンウンド需要の増大を見込んだNAA社長・田村明比古のLCC誘致など成田空港生き延び策でもあった。ANAの成田縮小は、NAA田村の拡大路線の破産でもある。昨年春に「航空需要を回復するために機能強化を」と叫んでいた田村は、「厳しいけど、飛躍のための準備を」(新年あいさつ)などといまだに強がり続けている。
NAA田村の居直りを弾劾し、第3滑走路建設を阻止しよう。