明日も耕す 農業問題の今 「戦略特区」は何を狙う 企業の農地所有は成功か?
週刊『三里塚』02頁(1056号02面04)(2021/01/25)
明日も耕す 農業問題の今
「戦略特区」は何を狙う
企業の農地所有は成功か?
1月10日の反対同盟新年旗開きで、全国農民会議共同代表の小川浩さんは、企業が農地を所有できるという兵庫県養父市の戦略特区をめぐる動きを取り上げ菅政権を批判した。戦略特区を通して、菅政権は何を狙うのか。
「養父市の農業特区でどのくらい企業が農地を所有したかというと、6社でたったの1町6反、1社当たり3反歩足らずです。ほとんどはリースで借りている。にもかかわらず、竹中平蔵や河野太郎は、兵庫での企業の農地所有は成功してる、だからそれを全国展開すべきだと主張しているのです」
小川さんはこう批判した。結果も出ていないのに何が全国展開か、普通はそう思うのが当然だ。だが、国家戦略特区の考えは「うまくいったら全国展開」なのではない。はじめに規制緩和ありきで「特段の問題がなければ全国展開すべし」というものなのだ。
竹中平蔵の焦り
少し経過を追ってみよう。政府は昨年10月22日、国家戦略特区諮問会議を開き、竹中平蔵ら「民間」の提言を踏まえ、一定期間が経過した特区の特例措置(企業の農地取得)は、特段の弊害がない場合、全国展開に向けた検討を重点的に進めるとした。しかし、あまりにも無茶な話に自民党内からも反対の声が上がる。農水省も全国展開には後ろ向き。それに対する危機感をあらわにしたのが、小川浩さんの取り上げた竹中・河野発言(11月21日の国家戦略特区諮問会議と規制改革推進会議の合同会議で)だ。
会議では結論が出ずに判断を先送りしたが、あらためて春先までに全国展開の話をまとめて法案審議に持っていこうとしている。
農地を守る意義
全国展開を主張する合同会議での意見を取り上げてみよう。「国家戦略特区は規制改革の突破口です。企業による農地所有を全国で可能にすることは、日本の規制改革の一丁目一番地。この改革すらできなければ、日本の成長は望めない」(八田達夫・アジア成長研究所理事長 )
「これから5年、10年、農業に関わる人たちの年齢を考えたら、企業に農業をやってくれという日が来るような気がしますし、企業の力を活用しなくて農業の近代化は本当にできるのですか」(坂根正弘・株式会社小松製作所顧問)
まさに「企業の競争こそが活力を生み、企業の成長こそが幸せをもたらす」と言わんばかりだ。だが、実際はどうだ。これまでの利潤追求第一のあり方が、新型コロナ感染拡大の中で医療崩壊を生み、格差拡大を招いたのではないのか。
他方で、環境危機や新型コロナを契機に、小農、家族農業や産直が見直されている。本年は、農業、農民、農地のあり方をかけた攻防の年になるだろう。市東さんの農地を守る闘いは極めて重要だ。その意義をあらためて世に明らかにし、最高裁決戦に勝利しよう。