貨物とLCCで延命はかる成田 旅客激減で悪あがき

週刊『三里塚』02頁(1054号02面03)(2020/12/28)


貨物とLCCで延命はかる成田
 旅客激減で悪あがき

(写真 成田空港が拠点のジップエア)


 12月16日、観光局が発表した11月の訪日客は前年同月比97・7%減で、14カ月連続前年割れとなった。旅客の回復が全く見込めない中、コロナに便乗する形で成田空港を貨物とLCC(格安航空会社)専用の空港にしようという動きが加速している。
 12月3日の千葉県議会で森田健作知事は成田空港周辺地域(9市町)を国家戦略特区に指定して規制緩和を行えるようにするための提案を来月にもすると明らかにした。空港周辺の土地利用の規制を緩和し、物流産業の拠点を作るのだと言う。
 10月の貨物便の発着回数は前年同月比183%増の3662回で過去最高だった。
 国とNAAは成田拡張の理由として観光立国を挙げてきたが、実は口実に過ぎなかったのだ。そして、貨物空港は有事の際には兵站(へいたん)拠点となることは言うまでもない。成田を軍事基地にしてはならない。
 LCC誘致による成田延命策はどうか。
 成田空港会社(NAA)社長の田村明比古は、国交省航空局長時代に羽田の再国際化を推し進めた人物だ。NAA社長就任時に、成田に後始末に来たと言い放ち、「表玄関は羽田へ、勝手口は成田に」と地方都市を結ぶLCC誘致に躍起となり第3ターミナルの更なる拡張や新規就航便の着陸料無料化などの政策を進めてきた。
 そうした中、昨年2月、国際線の中距離路線に特化したLCCとして成田を拠点とするジップエア・トーキョー(日本航空100%出資)が設立された。ボーイング787―8型機を親会社である日本航空の国際線用同型機の1・5倍の座席数に無理やり増やした。そして、LCCとしては初となるハワイ路線などで稼ごうとしていた。
 ところが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ジップエアの就航は延期。旅客を乗せずに貨物便として就航することになった。今年10月に初めて乗客を運んだ韓国便の搭乗者はわずか2人。その後タイ便を就航させるもタイ発の片道のみ。
 今月19日、3都市目となるハワイ便初の乗客は26人。またしても搭乗率は1割以下。さらに、21年1月まで16便を飛ばす予定だったが、そのうち3便は予約客がゼロだったため運航取りやめとなっている。旅客予約状況も全体で2桁程度で2月以降の就航は未定だ。
 鳴り物入りで誕生したLCCですらこの惨状だ。世界中のLCCの会社数はすでに飽和状態。「ナショナルフラッグ(国を代表する航空会社)」のように政府による救済対象にもならない。エアアジア・ジャパンは需要回復は見込めないと全路線を廃止し事業撤退を決めている。
 「無料で成田を使ってくれ」と税金から得た資金を湯水のごとくつぎ込むNAAを許さず、成田を廃港へ追い込もう。

このエントリーをはてなブックマークに追加