明日も耕す 農業問題の今 RCEPという新経済圏 貿易・関税で争闘戦激化
週刊『三里塚』02頁(1053号02面04)(2020/12/14)
明日も耕す 農業問題の今
RCEPという新経済圏
貿易・関税で争闘戦激化
11月15日、日本と中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN、10カ国)、オーストラリア、ニュージーランドの15カ国が地域的な包括的経済連携(RCEP)協定に合意・署名した。その意味するところは何か。
RCEPは、2013年5月から交渉を進めてきた経済連携協定だ。
GDP(国内総生産)の合計が世界の3割を占める巨大経済圏誕生で、関税分野のほか、知的財産など計19分野で共通ルールを策定する。
日本は、オーストラリアなどとはTPP、ASEANとはEPA(経済連携協定)をすでに結んでおり、RCEPは日本にとっては、貿易額が最大の中国、3位の韓国と初めて経済連携協定を結ぶという意味が大きい。
日本政府の最大のねらいはクルマの輸出だ。自動車部品など工業製品に参加国が課す関税は、段階的に下げて最終的な撤廃率は91・5%。世界最大の自動車市場である中国向けに、自動車用強化ガラス、電気自動車用リチウムイオン電池素材などの輸出をねらう。また、コロナショックでももろさが露呈したサプライチェーン(部品供給網)をひとつの経済圏の中にまとめて、その「効率化と安定化」をはかるものだ。
反対の声高く
農林水産・食品分野では、日本酒、米菓、パックご飯や果物の輸出拡大をねらう。他方、米、麦、牛肉、豚肉、乳製品、甘味資源作物の重要5品目と、中国からの輸入が多い、鶏肉、鶏肉調製品などは関税削減・撤廃の対象から除外した。
農水省は「国内農林水産業への特段の影響はない」という。マスコミもほとんど取り上げてこなかった。たしかにTPPや日米FTAに比べれば影響は少ないかもしれないが、もちろんゼロではない。それよりも目を向けるべきは、ASEAN諸国の労働者・農民への影響だ。
昨年、インドが交渉から離脱して15カ国となったが、離脱の理由は、報じられている対中貿易赤字の拡大懸念だけでなく、背景には数年に及ぶ農民、労働者の強固な反対運動がある。知財分野のさまざまなルールが妥協の産物となったり、農産物の関税引き下げが低く抑えられたのも、それぞれの国の反対の声に押されてのことだ。
菅政権のあがき
TPPなど、次々と締結されてきた大型の貿易協定や二国間協定は、お互いに連関し合い、すべての国の労働者人民の権利と暮らしを奪うむき出しのぶんどりあいのルール作りだ。
米中の協調と対立のはざまで争闘戦に勝ち残ろうと必死にあがく菅政権は、RCEPの発効に向けて来年の通常国会で承認を得ようとしているが、順風満帆になど進まない。各国の労働者民衆の怒りはますます爆発する。国際連帯の力を強化して闘おう。