「訪日観光実験」許すな 五輪開催向けツアー計画
週刊『三里塚』02頁(1053号02面03)(2020/12/14)
「訪日観光実験」許すな
五輪開催向けツアー計画
激減したインバウンド(訪日外国人客)の回復をめざし、菅政権は来春にも海外から小規模分散型の観光客「ツアー」を受け入れる検討に入ったことが報じられた。これは21年東京五輪とその後を見すえた「実証実験」と位置付けられている。
政府の思惑は以下の通り。新型コロナ感染を防ぐため、各ツアーは1カ所に集中させず、旅行会社に客の健康状態などを管理させながら、公共交通機関を使わず専用車両で観光地を回る。
実施時期や対象地域は国内外の感染状況を見て決める。五輪前にはこのツアー以外に観光客入国は認めない。
そして五輪観戦では、公共交通機関も開放して全世界から観客を迎える。その後、一般観光客の受け入れを段階的に再開する——。
あまりの身勝手な想定の「実験」計画に驚きあきれ、怒りを抑えることができない。菅政権はコロナで大破産した観光立国政策にしがみつき、旅行客ゼロの現状を覆して、とにかく来年に海外から観客を入れた五輪開催にこぎつけ、その後大々的に観光客を受け入れる、そのために人々を実験台に使うというのだ。
新型コロナの感染が爆発的に拡大している今この時、政権が本来全力でやるべきことは感染防止と医療体制の充実ではないのか。ところが菅の頭の中は、五輪と観光客のことしかない。恐るべきことだ!
菅政権は、「2030年に訪日客6千万人」という目標を堅持するという。成長戦略会議メンバーで首相ブレーンのデービッド・アトキンソン(小西美術工芸社社長)の主張をそのまま採用し、「日本は観光でもうける」という既定路線を絶望的に突き進もうというのだ。
コロナ以前の昨19年の外国人観光客が3千万人で、すでに各地でオーバーツーリズム現象(大混雑によるトラブル)を引き起こしていた。「訪日6千万人」をリアルに想定すれば、予測不能の大混乱と事故が続発することは必至。しかもその時にコロナが収束している保証など何もない。
感染拡大を後押ししながら今強行されているGoToトラベルも、あまりに破滅的で支離滅裂な政策だ。「旅行業界支援」を名目としながら実際に恩恵を受けているのは、高額の個人・家族旅行を扱う大手旅行業者ばかり。団体旅行などの扱いを主とする中小の旅行会社や各観光地の中小の宿泊業は壊滅的な影響を受けたままだ。
ツアー実験をまかされるのも、JTBなどの大手旅行会社以外にありえない。「中小企業は生産性が低く、淘汰されて当然」という菅政権の「成長戦略」の本質が露骨に現れている。
実験台にされるのは単に外国人客だけではなく、労働者人民すべてだ。この社会全体を実験場とし、コロナの危険が際限なく降り注ぐ中を人々に向かって「五輪決行へ突撃! ひるむな、かいくぐれ」と号令するのが菅だ。
成田空港がその実験の受け入れ口として使われるだろう。絶対に許してはならない。
東京五輪を中止せよ! 観光立国政策、ツアー実験もろとも菅を打倒しよう!