正規職として職場に戻せ 「あなたは蜘蛛を見たことがありますか」 旭闘争ドキュメンタリー上映会
週刊『三里塚』02頁(1052号02面04)(2020/11/23)
正規職として職場に戻せ
「あなたは蜘蛛を見たことがありますか」
旭闘争ドキュメンタリー上映会
(写真 映画上映会【15日 東京・亀戸】)
11月15日、東京・亀戸で映画「あなたは蜘蛛を見たことがありますか」の上映会が開かれた。韓国・民主労総金属労組旭非正規職支会の解雇撤回闘争を中心とするドキュメンタリーだ。
2015年、韓国・亀尾(クミ)市の日本企業・旭硝子(ガラス)の社内下請け会社GTSで働く非正規職労働者は、初めて労働組合を結成した。その1カ月後、元請けの旭硝子資本はGTSとの業務契約を突如として打ち切り、そこで働いていた労働者178人全員を携帯メール一本の通告で解雇した。以来5年、138人いた組合員は22人となったが、旭支会は不屈に闘いぬいている。旭支会が提訴した勤労者地位確認訴訟は、昨年、原告勝訴をかちとった。裁判所は「被告(旭硝子)は、原告に雇用の意思表示をせよ」と命令した。しかし、旭硝子は直接雇用当事者であることを否認し、今日まで闘いは続いている。
映画は、籠城闘争や正門前での抗議行動など激しいシーンもあるが、劇的な激突場面がメインではない。組合員一人一人の思いが丹念に拾い上げられ、それが秀逸なのだ。下請け、期間制、派遣、特殊雇用など労働者と認められない非正規職は、職場では名前で呼ばれることはない。現場で自分や他の人がののしられても何も言えずに沈黙する。そうした状況に対し、団結し声を上げ立ち向かうことで、労働者が誇りと笑顔をとり戻すことが生き生き描かれる。
一人の労働者は「妻は本当のことを話すと怒るのでいつも話を盛っています」と語る。「普通」の労働者が、闘うことで自分を変える。これが最重要の獲得物であり、「これ以上の勝利はない」(チャホノ支会長、上映会メッセージ)ということを確信させる。
旭非正規職支会は、他の非正規労働者の闘いとの連帯を重視している。これがタイトルの「…蜘蛛…」になっている。「蜘蛛が糸をつくるように旭闘争が連帯の蜘蛛の糸を張りめぐらし、非正規労働者たちは、相互につながっていることを示している」(チャホノ支会長)。旭闘争が切り開いている地平は大きい。韓国では1100万人が非正規労働者で、2千人以上が資本によって殺されている。この映画は「そのような痛みが込められている」(チャホノ支会長)。18年12月、テアン火力発電所でベルトコンベヤーに巻き込まれて亡くなった24歳の非正規職労働者キムヨンギュン烈士。彼の母親・キムミスクさんは、「息子がなぜ死ななければならなかったのか。国が構造的に非正規職をつくり、人間扱いしなかったからです」と、雇用労働部長官に迫る。チョンテイル烈士が「勤労基準法を守れ!」と叫んで炎に包まれてから50年。非正規職撤廃へ新たな闘いが巻き起こっている。
「解雇撤回!正規職として職場に戻せ!」「団結こそは、希望」との呼びかけは、コロナを口実とする大量解雇と闘う日本の労働者にこそ求められている。上映時間73分。DVDも2000円で販売されている。各地で上映会を開き、労働組合の組織化と旭非正規職支会への支援を強化しよう。
(大戸剛)