国産ジェットを凍結 開発・製造・流通、全て力不足
国産ジェットを凍結
開発・製造・流通、全て力不足
証明取得できず
三菱重工業は10月30日、国産ジェット旅客機の三菱スペースジェット=MSJ(旧MRJ)の事業を凍結すると正式発表した。MSJは、日本の航空機産業を育成する官民共同のプロジェクトとして経済産業省も当初500億円を支援し、1兆円近い開発費がつぎ込まれてきた。プロペラ機の「YS―11」に続く失敗で、「日の丸飛行機」製造は絶望的となった。
MSJ凍結理由を三菱重工業は、「米国での型式証明(TC)を取得できず、今後仮に90席クラスの認証を取ってもコロナ感染症の拡大で航空機需要が激減し、採算割れとなる」と説明。
杉江弘氏(航空評論家/元日本航空機長)の指摘によると、TCを取得できなかったのは①三菱航空機が官民プロジェクトの安易さに依拠し国際基準による設計を進めなかったこと、②座席数が最大88席まででないとリージョナルジェット(小型ジェット旅客機)として認められない米労使間の「スコープ・クローズ」協定を無視したことが大きいという。
「スコープ・クローズ」がある以上、当初のMRJ(90席機)は、リージョナルジェットとしてアメリカで使用できない。そのため、三菱航空機は新型機を70席機として最初から開発・製造をやり直すという大失態(名称も「MRJ」から「MSJ」に変更)。
総じて、機体全体の設計から開発、生産、安全確保までを統合指揮する力の欠如が、失敗を招いた。コロナによる需要減退は、それにとどめを刺したに過ぎない。
さらに、技術上の問題以上に、航空機を生産、販売・流通するのに必要な帝国主義的力量不足が根底にある。現代帝国主義の基幹産業の一つである航空機産業は、争闘戦の最も激しい戦略部門であり、各国の政治的・経済的・軍事的な全力量と蓄積によって勝敗が決定する。第2次大戦に勝利した米帝は、日帝の航空産業を解体した。敗戦帝国主義としての制約を突破するための最重要課題として、日帝が戦後一貫して追求しつづけているのが独自の航空機生産の事業化だ。
軍事技術に直結
空軍力の自前での装備なくして、近代戦はあり得ない。先端技術の集約である戦闘機を開発・製造するためには、膨大なすそ野産業を要する。また、民間企業では戦闘機のみの生産では採算が合わない。民間航空機の生産事業で利益を上げ、それと一体でなければ、民間としては維持できない。軍事に直結した政治・経済の官民の総合力をもってしか、航空産業の新勢力として割り込めないのである。
同時に確認すべきは、MSJ失敗からの日帝と三菱重工の死活をかけた取り戻しは、よりむき出しの軍事化となることだ。防衛省は、自衛隊F2後継機の開発について三菱重工と契約する国産方針を発表した。開発費は、1兆円規模の巨大プロジェクトとされている。湯水のように軍事に税金を投入する菅政権を打倒しよう。