航空バブル崩壊国際線は羽田へ 成田廃港は必至 ANA赤字5100億円 野放図な拡大路線が致命傷

週刊『三里塚』02頁(1051号02面01)(2020/11/09)


航空バブル崩壊国際線は羽田へ 成田廃港は必至
 ANA赤字5100億円
 野放図な拡大路線が致命傷

(写真 今日も駐機場には行く先のない機体が並ぶ)

生き残りをかけた戦いに

 全日空(ANA)は10月27日、21年3月期連結業績を5100億円の純損失と発表した。通期の売上高は7400億円(前年比62・5%減)、営業損益は5050億円の赤字と見込む。
 日本航空(JAL)も30日、21年3月期の最終赤字が最大2700億円になる見通しを発表。4〜9月期の連結最終損益(国際会計基準)は、1612億円の赤字だった(前年同期は541億円の黒字)。赤字は再上場後初の事態だ。
 コロナを契機とする航空バブルの崩壊は、航空業界を倒産の危機に追い込むとともに、世界的なキャリアフラッグの再編を不可避とする。
 コロナ恐慌のさらなる本格的爆発は、航空業界の大資本同士の生き残りをかけた全面的な争闘となる。
 今回ANAは、航空事業の縮小、LCCとの提携、人件費削減策などを盛り込んだ事業構造改革をまとめた。その軸となるのが、「脱・航空一本足」と言われる航空以外で収益を上げるという方針だ。マイレージ情報を活用し、金融・旅行・広告などを収益源にしようとする計画だ。事業別売上高で非航空事業を25%以上にするというが、焼け石に水である。
 事業規模の縮小では、21年3月期中に大型機を中心として35機を退役させ、導入予定だった機材(超大型機「A380」3号機)の受け入れを遅らせる。これにより、21年3月末の保有機数を1割(33機)減らす。この特別損失だけで1100億円の赤字だ。

新LCC設立もリスク大

 LCCとの連携では、22年度をめどに新たなLCCブランドをピーチ・アビエーションに続く「第3ブランド」として設立する。これはANAの100%出資会社のエアージャパンが母体となり、フルサービスキャリアとLCCの中間のようなサービスをアジア・オセアニア路線で開拓しようとするものだ。しかし、これに対して市場からはすでに疑問の声が出ている。これまで中距離LCCには優れた実績がないことや追加コストを発生させると分析し、アナリストらは現時点では「重大なリスクがあると考える」「今は最適な時期ではないかもしれない」と指摘。いずれにしても大赤字を補うことはできない。
 今日のANAの経営危機は、経営陣の野放図な拡大路線が原因だ。それを後押ししたのは、政府の航空政策であり、責任は新自由主義を進めた日本帝国主義にある。ANAは、航空バブルの申し子だ。2010年に破綻したJALからナショナルフラッグキャリアの座を奪い、ANAは過去10年間で、保有する機体を217機から20年には268機と約1・2倍に拡大。従業員数も10年の3万2578人から20年には4万5849人と1・4倍に増やした。
 それに伴い機材の整備費やリース費用も膨らんだ。航空機のメンテナンス費は563億円から19年は1571億円に、レンタル費は604億円から倍増した。今日、何もしなくても機材費だけで月200億円という巨額の現金流出となった。
 国際航空運送協会(IATA)は27日、21年の航空業界の売上高は19年の約半分に落ち込むとの見通しを明らかにした。ANAは、来年にも倒産に直面せざるを得い。

賃下げ・解雇・出向強要

 ANA・JALの経営危機に大打撃を受けているのが、NAAだ。
 ANAの構造改革で、特に注目すべき点は、現在8割以上が運休する国際線の再開を「羽田優先」としたことである。その理由は「需要の回復が見込みやすい」というものだ。成田がスルーされた格好だ。ANAは、成田、中部、関西空港発着の復便は需要動向を見ながら判断するとしているが、今年度以降の国際線就航予定数51都市の縮小の多くが成田便と予測される。雪崩のようにキャリア便の成田からの撤退が始まった。
 右肩上がりを前提とする航空需要予測は、完全に破産した。ANA・JAL幹部でさえ、コロナ後の航空需要の縮小を「新常態」といってビジネス便の減少を公言している。すでに、200近い空港が今後数カ月で破産する可能性があると、国際空港評議会(ACI)欧州支部が27日、発表した。空港首都圏空港機能強化計画を直ちに撤回させよう。
 また、コロナに便乗した賃下げ、解雇を阻止しよう。ANAは、21年春入社の新卒採用を中止、一般職に対しては年収の3割減を提案、希望退職も募集しはじめた。22年度まで3500人削減し、数社に社員を出向させる。JALでは、約500人をグループ外企業に出向や派遣させ、子会社の正社員200人程度の希望退職を募集する。出向や派遣では、本来業務と無関係である接客や営業に当たらせようとしているのだ。理不尽に対する怒りの声が上がっている。航空産業をめぐる歴史を画する大攻撃を労働者の団結で粉砕しよう。

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