団結街道
週刊『三里塚』02頁(1049号01面05)(2020/10/12)
団結街道
夜が涼しくなったのはいいのだが、冬野菜の作付け前に撒かれたであろう堆肥の香りがわが家の寝室にまで漂い、いささか閉口していた。ところが先日、朝目覚めると金木犀(キンモクセイ)の香りに変わっていた。私は秋を告げる花=金木犀が大好きだ▼畳3枚を横に並べた東京拘置所のB棟7階。窓はあるが、建物の内側を向いていて外の景色は見られない。外の世界との交通が断たれ、神との交信で自己を維持しようとしたのだろうか。壁には外国人が描いたと思しき十字架がうっすらと浮かび上がる。隅田川花火大会の音と光で夏の終わりを感じた2008年▼ある朝、縄跳びをするために房から運動場へと向かう階段を歩いていると、ふと金木犀が香った。秋が来た。そう実感し、一気にテンションが上がった。すでに食事ではサンマが出ていた。透明のレトルトパックに入った焼きサンマにパック詰めの大根おろしをかけ、自前のヒゲタ醤油を垂らし食した。だが香ばしさが足りない。無理をしてパックに詰めた秋の味覚は味気なかった▼それと比べると、金木犀の香りには作為や嘘がない。咲いていることを隠せないほど遠くまで香りが届くことに由来する「真実」、強い香りを放つ割には花びらは小さく控えめなことにちなんだ「謙虚」という金木犀の花言葉は三里塚農民の闘いを彷彿させる。「嘘はつかない」と誠実に無農薬有機野菜作りに励む市東さんの畑を守ろう。