安保・戦争戦略を阻む三里塚「敵基地攻撃」を叫び、米トランプ政権と一体で実際の戦争へと踏み出そうとする安倍の犯罪性 寄稿 水樹 豊

週刊『三里塚』02頁(1046号02面01)(2020/08/24)


安保・戦争戦略を阻む三里塚
「敵基地攻撃」を叫び、米トランプ政権と一体で実際の戦争へと踏み出そうとする安倍の犯罪性
 寄稿 水樹 豊

(写真 「敵基地攻撃能力」の保有を狙う安倍政権)

「コロナ対策」で改憲促進

 「農地死守」の原則とともに「軍事空港絶対反対」を貫き、半世紀以上にわたり不屈に闘い抜かれてきた三里塚闘争が、今やその「反戦の砦」としての真価を発揮するときが来ていると思います。
 安倍首相が「2020年までに新憲法を施行する」とぶち上げたのは2017年5月でした。今やその改憲スケジュールは完全に破綻しました。さらに今年7月、地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画が撤回されたことで、安倍政権が推し進めてきた安保・軍事戦略は根本的な見直しを迫られています。といってもそれは、これまで巨額の税金を湯水のように投じて進めてきた一大軍拡戦略を縮小するという方向ではなく、ますますエスカレートさせる方向に向かおうとしています。
 いわゆる「敵基地攻撃能力」の保有に向けた公式の議論の開始、そして年末に予定される国家安全保障戦略(NSS)の改定にそれを盛り込み、実際に他国を先制攻撃できる軍事態勢の構築へと踏み出そうとしていることは周知の通りです。これと並行して、今秋の臨時国会で改憲国民投票法を改定し、野党を巻き込んだ改憲論議の推進を図ろうとしています。「コロナ対策」に名を借りた緊急事態条項導入の議論が、国民世論を改憲へと誘導するための突破口に位置付けられていることは間違いありません。

背景に日米安保の大転換

 こうした安倍政権の動きの背景には、米トランプ政権の新たな軍事戦略があります。ロシアと結んでいたINF(中距離核戦力)全廃条約を、昨年8月をもって一方的に破棄したトランプ政権は、ただちにアジア・太平洋地域の同盟国に新型中距離ミサイルを大量配備する計画をぶちあげました。具体的な配備先については言及を避けてきましたが、今月14日、国務省のビリングスリー大統領特使が日本経済新聞のインタビューに答え、日本への配備を考えていることを公式に認めました。さらに、日本が「敵基地攻撃能力」を保有することについても「価値あるものだ」と支持しました。米政府高官によるこのような発言は極めて異例です。これは、敵地への直接攻撃は米軍が行い、自衛隊は「専守防衛」の建前のもとで基本的に米軍の後方支援部隊を担うとしてきた日米安保の従来のあり方から、大きく転換することを意味します。それを米政府が公然と認め、歓迎したということです。
 今や没落・衰退し世界支配力を失いつつあるアメリカは、台頭する中国を軍事力でたたき伏せようと画策し、その戦略に日本などの同盟国を総動員しようと必死になっています。中国との軍事衝突や、北朝鮮の転覆・壊滅を目標とする朝鮮半島での戦争に向けて、今や米日が一体となって本格的な準備を始めたということです。そして沖縄をはじめとする日本全土が核ミサイルの貯蔵庫に、そして核による先制攻撃の出撃拠点へとつくりかえられようとしているのです。
 ところで、「ミサイルの迎撃が不可能なら先にたたけばいいじゃないか」「日本を守るためには敵基地攻撃もやむをえない」といった議論が、自民党やその意を受けたマスコミなどで吹聴されていますが、果たしてそうでしょうか。

「敵勢力の無力化」って?

 具体的に問題を検討してみると、敵基地への先制攻撃による「敵勢力の無力化」など、今日的・現実的には極めて困難であることはすぐに分かります。
 例えば北朝鮮の場合、2018年に米軍が把握しただけで、スカッドミサイル用の発射台は100基、ノドン用は50基、ムスダン用50基、合計して200基のミサイル発射台があるとされます。しかも「北朝鮮の基地は7割が地下化されており、偵察衛星でも完全には補足できない。……地上部隊の派遣を抜きにすべてのミサイル基地を破壊するのは困難だろう」(防衛省関係者の話。半田滋『安保法制下で進む!先制攻撃できる自衛隊』より)。
 これらを一挙同時に、たった一回の攻撃ですべて無力化しない限り、「敵基地攻撃による自国防衛」など成り立たない。そうでない限り、中途半端に先制攻撃を仕掛けても相手の反撃を阻止することなどできないのです。その上、北朝鮮は発射台を常に移動させており、最新の軍事情報を逐一・完全に把握しないと、攻撃目標の指定すらできない。米軍ですら完全には把握できないとされる北朝鮮の軍事情報を、自衛隊はどうやって手に入れるというのでしょうか。しかも舞水端里(ムスダンニ)と東倉里(トンチャンニ)の軍事拠点は中国国境に近く、攻撃すれば(それどころか偵察しただけでも)中国軍と衝突する可能性が高いとみられます。もはや収拾のつかない事態となることは避けられないのです。
 それでも、トランプ政権にとっては、北朝鮮や中国の「反撃」が米本土にまで届かず、韓国や日本が盾になって引き受けてくれればいい、という考えなのでしょう。こんな犯罪的で身勝手極まる戦争によって、朝鮮半島や中国、日本などで生活する人々がどれほど無残に殺されることになるか。想像するだけで怒りを禁じえません。
 しかしながら、全国各地で取り組まれてきた改憲・戦争阻止の闘いは安倍政権を着実に追い詰め、米日政府による戦争の発動を容易に許さない力関係をもつくりあげています。
 そしてコロナ禍のもとでの成田空港の機能強化策は、空港の軍事利用以外に何の説明もできないものとなりつつあります。今や成田空港は文字通り「廃港」のふちに立たされています。市東孝雄さんの農地を死守し、軍事空港粉砕へ闘いましょう。9・27全国総決起集会とデモを成功させ、今秋の改憲・戦争阻止の闘いののろしをあげましょう。
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