明日も耕す 農業問題の今 農業「戦略特区」の破産 企業の農地取得進まず

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週刊『三里塚』02頁(1043号02面04)(2020/07/13)


明日も耕す 農業問題の今
 農業「戦略特区」の破産
 企業の農地取得進まず


 国家戦略特区諮問会議は、兵庫県養父市に限って認めている企業の農地取得特例について、2021年8月末までの期限を延長するかどうか検討すると決めた。企業の農地取得規制撤廃に向けた動きを許してはならない。

 中小企業向けの給付金納付をめぐって、経済産業省と電通、派遣会社大手のパソナ(会長は竹中平蔵)が結託し、国家資金を食い物にしていたことが先日明らかになった。こうしたマッチポンプのようなやり口はいくつも行われている。
 スーパーシティ法案(国家戦略特区法改正案)がコロナ危機に乗じて5月27日に可決されたが、この「スーパーシティ」構想の実現に向けた有識者懇談会の座長を務めていたのが竹中平蔵氏だ。
 竹中が会長を務めるパソナは、すでに国家戦略特区の大阪、神奈川等で外国人家事代行サービスを展開している。そして、今回取り上げた兵庫県養父市の国家戦略特区で農業に算入しているオリックスでも竹中が社外取締役を務めている。

竹中の金もうけ

 政府は16年5月、国家戦略特区法を改正し、一般企業が農地を所有できる特例を新設した。そして、養父市で適用期間を21年8月までに限り施行された。今回検討される特例期限の延長は、竹中の金もうけそのものだ。
 5月下旬に開かれた国家戦略特区会議で養父市の広瀬栄市長は、特区の効果を強調したうえで、「農家にアンケートを実施したところ、後継者がいないため『農業を辞めざるをえない』『農地を売らざるをえない』という農家が3割を超えることがわかった。中山間地域では企業も含めた責任ある担い手を求めている」と述べたという。
 企業のための農政で中小農家をつぶしながら、「企業が農業の担い手」などというのが金もうけの戦略特区の正体だ。

財界の焦り募る

 だが、企業の農地所有をうたい文句にはじめた戦略特区は本当にうまくいっているのか。
 養父市によると、特例が始まった16年9月以降20年3月末までの3年半で農地を取得したのは6社。取得面積は計1・64㌶で、6社の経営面積の6・6%にすぎない。
 同市によると、市内の農地取得費用は10㌶当たり63万円。一方、リース費用は年間で同5500円で、取得した場合と比べて大きな差がある。企業はもうけが第一だから、借りた方が良ければそうするのは当然だ。
 戦略特区で農地取得のモデルをつくり、全国に広げるもくろみは破産している。
 だからこそ、焦りにかられた財界からは、企業の農地取得を求める声が日増しに高まっている。あからさまに農地を「もっと自由に使わせろ」ということだ。
 冗談じゃない。これ以上奴らの金もうけのために、農地を奪われてなるものか。コロナで農地・農業のあり方が見直されている。国家戦略特区を許さず、企業の農地所有を打ち砕こう。
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