農地死守、強制執行反対の要望書集めよう 9・2請求異議控訴審東京高裁へ
農地死守、強制執行反対の要望書集めよう
9・2請求異議控訴審東京高裁へ
反対同盟顧問弁護団事務局長 葉山岳夫弁護士に聞く
「成田廃港」は現実の課題となった
延期していた市東さんの農地強奪強制執行を阻む請求異議裁判控訴審・第3回が9月2日、同第4回が10月22日に東京高裁で開かれることが決まった。成田空港会社(NAA)が4月12日に閉鎖したB滑走路の再開はなく、空港機能強化策(第3滑走路建設・運用時間延長)など論外だ。今こそ破綻の危機に立つ成田空港を廃港に追い込もう。そのための第一歩が、労農学人民の力で市東さんの農地と営農を守りぬくことだ。要望書を集め、東京高裁を包囲しよう。三里塚芝山連合空港反対同盟顧問弁護団事務局長の葉山岳夫弁護士に現下の裁判攻防について伺った。
B滑走路閉鎖、回復不能
----WHO(世界保健機関)が3月11日に新型コロナウイルス感染症(COVID―19)のパンデミック(世界的流行)を宣言しました。3月末に予定されていた市東さんの農地取り上げ強制執行を阻む請求異議裁判の延期が決まりました。安倍首相は4月7日に千葉県を含む7都府県に緊急事態宣言を出し、16日には対象を全国に拡大しました。4月12日には、成田空港が 滑走路が閉鎖に追い込まれました。この前代未聞の事態について弁護団としてどう考えていますか。
最終準備書面の陳述前に重大な新事実が発生しました。4月12日からの 滑走路閉鎖という事態は、一時的なものではありません。問題の根はもっと深いものです。
一つは、グローバリゼーションがコロナウイルスによって断ち切られてきたという問題です。新型コロナウイルスのパンデミックという中で、全世界で航空機そのものが飛べず、インバウンド(訪日外国人客)がほとんどなくなった。壊滅的な状態が現出したということですね。IATA(国際航空運送協会)も少なくとも24年までは19年の状態までの回復を期待することはできないと言っていますが、もはや19年のような状態に回復することはあり得ません。
観光客が主に利用しているLCC(格安航空会社)にしてもぎっしり座席を埋めることで格安にしているわけです。ゆとりをもたせて乗せていては自己否定になります。早晩LCCは破産せざるを得ないと思います。それどころか、全世界のエアライン(航空会社)が倒産の危機にあります。また、テレワーク、リモート会議などの普及でこれまでのようにビジネスマンが世界中を移動するということは減ります。これらは構造的な問題であって、コロナがおさまれば自然と元の状態に回復するということはありません。
もう一つは、コロナウイルスを契機にして世界的な恐慌状態が一層深まるということです。年頭から私は強調していたことなのですが、20年内あるいは21年にはリーマンショックを数段上回るバブル破裂の確率が極めて高くなってきました。もし、バブルが破裂すればリーマンショックの数倍ないし十倍以上の大恐慌状態が現出する。この新型コロナによるパンデミック状態が先行した上で、さらなる大恐慌が必ずや出てきます。
FRB(米連邦準備制度理事会)は、あらゆる垣根をとっぱらってあらゆる金融証券を買い入れています。金融バブルの破裂を食い止めるために株価維持に必死になっていますが、早晩それは行き詰まるし、大恐慌は必至だと思うわけです。
この意味で、航空需要が24年頃に回復することは到底あり得ません。その始まりがB滑走路の4月12日の閉鎖であり、ターミナルや店舗等の大部分の休業ないし閉鎖です。NAAは20年の収支決算について今これを発表することすらもできないし、予測についても語ることができません。明らかに数百億〜1千億円程度の損失が出ることは間違いない状況です。今後も長期にわたり、NAAにとってはさらに壊滅的な状況が出てくるのは明らかです。
農地奪う根拠は完全消滅
----そういう中で今、市東さんの裁判は延期され、9月2日から請求異議控訴審での証人調べが行われます。
今の航空産業の危機そのものを明確に論証するなかで、NAAが強行しようとしている強制執行がいかに非合理であり、権利濫用(らんよう)であるのか、違法であるかについて暴き出すことです。そのことよって空港廃港に向けた決定的な闘争の一つとして、この請求異議訴訟などの裁判闘争の重大な意義があると思います。
NAAは強制執行について、「裁判が確定すれば強制執行するのが当たり前」と、「強制執行の必要性も緊急性も述べる必要はない」と、高飛車で権力的な主張をしています。
他方、強制執行される側としての市東孝雄さんの立場は、無農薬有機農業でこの南台、天神峰の農地について、自らの生きがいとして、そして産直事業のかけがえのない、生きていくための事業のための農地としてこれを耕しています。そこを奪う、農民の命を奪うという決定的な不利益を強制するようなものとして強制執行が存在します。
B滑走路の閉鎖で、その必要性も緊急性もないことがはっきりしました。その中で強制執行を強行することは、明白な権利濫用でとうてい許されません。
それだけではありません。「(平行滑走路の用地取得については)あらゆる意味において強制的手段を用いてはならず、あくまで話し合いで解決する」「計画区域の住民などの合意を得ながら進める」という隅谷調査団の最終所見に違反します。当時の公団総裁も千葉県知事も11市町村も亀井静香運輸大臣も無留保で受け入れたこの合意に違背するのです。法律的に言えば、「権利濫用」「信義則違反」であり、さらに「強制執行権の放棄」あるいは「不執行の合意」に違背していることは明らかです。B滑走路の閉鎖問題でさらに鮮明になりました。
----NAAの田村社長はこの状況にもかかわらず、空港機能強化はスケジュール通り進めると言っています。
犯罪的なことだと思います。実際上、不可能な事態に陥ってくると確信します。だけど、NAAの立場としては自己否定することになるので今ここで打ち切るとは言えない。だとすれば、責任を持って経済的な見通しを語らなければいけない。このように投資をすれば収益があがって「国益」に寄与するんだと。そうしたことが語られないまま従前通り行うと言っても、何ら裏付けのない空手形に過ぎない。だがしかし、やめざるを得ない状況だということを確信しています。
----コロナ情勢の中で、市東さんの営農の意義も増しています。
世界有数の農産物純輸入国で食料自給率そのものが38%と極めて低く、食料危機そのものが国内においても起こりうる状況の中で、市東さんが無農薬有機農業・産直を展開していることが極めて重大な意味を持っています。私自身も産直野菜を食べていますが、おかげ様で非常に健康ですし、実際に力になっていると実感しています。小規模でも独占資本の流通経路に頼らずに都市の労働者・市民と産直運動を通じて提携するという巨大な意義があります。
現地闘争の一環として
----7月16日には千葉地裁で新やぐら裁判が予定されています。
東京高裁に転任した内田博久裁判長が職務代行者として千葉地裁に乗り込むという極めて異例なやり方で 滑走路の閉鎖問題についての主張・立証する十分な準備時間も与えないままに、強引に結審して、拙速反動判決を強行しようとしています。千葉地裁は傍聴席を3分の1の27席に制限すると言っていますが、絶対に許されることではありません。
弁護団はこれらに反対して期日の取り消し、延期を強く要求していますが内田裁判長は強行しようとしています。どうしても変更はないのであれば法廷で真正面から対決するほかありません。その場合には不当な訴訟指揮を許さないためにも千葉地裁を怒りで包囲することが必要です。全力を挙げて傍聴に駆けつけてほしいです。
----最後に全国の読者に弁護団代表しての訴えをお願いします。
4月からの滑走路の閉鎖は一時的なアクシデントではありません。成田空港そのものが大きく陥没する、粉砕される一歩手前の状況に来ているという事態です。とんでもない事態が今起こっている。反対同盟が空港粉砕を一貫して主張してきたことが今、目の前に来ているという、その事実認識をぜひもってもらいたい。成田空港はいわば倒産会社みたいな状況になってしまう可能性が十分にあるわけです。無理をして営業をするでしょうが、実態としては完全に倒産会社。廃港の現実性が出てきました。
闘いは、正念場に入ってきました。7月16日は、大きな山場ですが、9月2日の請求異議裁判控訴審、9月14日の耕作権裁判もあります。現地闘争の一環として裁判闘争が極めて重要な局面に入っているということを強調します。
反対同盟と弁護団の主張が実を結ぶ可能性は大きくひろがってきています。弁護団も全力で闘います。
------------------------------------------------------------
400万円カンパ集めよう
〈郵便振替〉
00130―0―562987 三里塚芝山連合空港反対同盟
〈銀行口座〉
みずほ銀行成田支店 普通預金 2074135 イトウノブハル