フランス 国内線減便、CO25割削減へ 背景に飛行機不使用運動

週刊『三里塚』02頁(1042号02面03)(2020/06/22)


フランス
 国内線減便、CO25割削減へ
 背景に飛行機不使用運動


 各国航空会社の経営危機と救済策が本格化している。その中で特徴的なのが、仏政府のエールフランスKLM(写真)への融資だ。
 エールフランスKLMは、フランスとオランダそれぞれのナショナルフラッグ二社が、経営合併してできたEUを代表する航空会社である。コロナショックによる経営危機に対して、もともと経営基盤が弱いエールフランスKLMは、政府への直接融資を要請するしかなかった。仏政府は、この融資に次の条件を付けた。鉄道で2時間半以内の距離の国内線の減便と、CO2排出量の5割削減というものだ。仏政府は、温暖化ガスの排出削減などの対策をもりこむことで、財政出動に対する国民的批判をかわそうとしている。
 背景にあるのが、航空機のCO2大量排出とそれに抗議の「飛び恥」アピールだ。航空会社は世界のCO2排出量の2%を占めている。EUでは、航空に代わり排出量の少ない鉄道への輸送シフトを進めている。今年1月には、自国発の航空券にエコ課税を導入、資金を鉄道網の整備に投入していた。今回も、その政策の延長にある。
 「飛び恥(Flygskam/ 英語の表記ではflight-shaming)」は、スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんが18年に国際会議参加につき、飛行機の搭乗を拒否したことから始まった。彼女は、環境を破壊する飛行機に乗ることを恥ずかしく思うと表明し、すべての人が航空機の代替手段を利用して旅行することを訴えた。EUを中心に、この「飛び恥」運動が定着しつつある。
 飛行機不使用を呼びかけ続ける団体の一つ、スウェーデンのNPO「私たちは、地面にとどまる」のホームページによると、スウェーデン人は平均して1年に1回程度、飛行機での海外旅行をし、片道の平均が約2700㌔(名古屋から香港ぐらい)で、その温室効果ガス排出量は二酸化炭素換算で1㌧。これは自家用車の1年間の排出量とほぼ同じ。スウェーデン人の一人当たり温室効果ガス排出量は年間10㌧なので、飛行機旅行で1割にあたるCO2を排出する。そこまでして飛行機を使う必要はない、という考え方だ。
 このNPOの代表によれば、「多くのスウェーデン人にとって、飛行機での旅行は自慢の対象ではなくなりました。ヨーロッパを移動する際には、地上を走る鉄道を利用するのが一種のトレンドで「鉄道(列車)自慢(Tagstolthet/英語ではTrain Pride)」という言葉ができているくらい」とのことだ。スウェーデン鉄道(SJ)が、18年に国内旅行のために列車に乗る数が8%増加した、と発表したことで裏付けられている。
 コロナショックは、グローバリズムの象徴の一つである航空業を直撃した。世界経済の縮小と市場の分断は、航空需要の回復を不可能としている。個人旅行の減退、ビジネス出張の削減、国際的イベントや会議の縮小は、コロナ規制が解除されたとしても世界経済の基調となる。仏政府の環境対策を理由とした航空便削減は、その航空需要縮小の流れの一つだ。
 環境を破壊する元凶として、航空業と空港建設がある。膨大な農地と航空機騒音の拡大による周辺住民の生活を破壊する機能強化策を直ちにやめさせよう。

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