明日も耕す 農業問題の今 食料危機―差し迫る現実 米貿易自由化戦略の罪
週刊『三里塚』02頁(1041号02面04)(2020/06/08)
明日も耕す 農業問題の今
食料危機―差し迫る現実
米貿易自由化戦略の罪
国連世界食糧計画(WFP)は4月21日、新型コロナウイルス感染拡大の影響で食料不足に苦しむ人が倍増し、今年、世界全体で2億6500万人に上る恐れがあると発表した。食料危機が現実の課題になりつつある。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって生産と物流が滞る中で、食料不足への危機感から、現在19の国と地域で農産物の輸出規制が導入されているという。
農産物が投機に
この輸出規制に対し、主要20カ国・地域(G20)の農相らは4月、「食料価格の乱高下を招いて、食料の安全保障と人々の栄養を脅かしかねない」と懸念を表明した。また、3月末、国連食糧農業機関(FAO)、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)は共同声明で輸出規制の抑制を要請した。一見「なるほど」と思えるが、東京大学大学院教授の鈴木宣弘さんは逆に「ショックドクトリン(災禍に便乗した規制緩和の加速)だ」と警鐘を鳴らしている。
どういうことか。例証として氏が示している2008年食料危機についての論述を紹介したい。「米国は、自国の農業保護(輸出補助金)は温存しつつ、世界の農産物貿易自由化を進めて、安価な輸出で他国の農業を縮小させてきた。それによって、基礎食料の生産国が減り、米国等の少数国に依存する市場構造になった。その結果、需給にショックが生じると価格が上がりやすく、高値期待から投機マネーが入りやすくなった。その不安心理から輸出規制が起きやすくなり、こうして高くて買えないどころか、お金を出しても買えなくなってしまったことが今回の危機を大きくした。つまり、米国の食料貿易自由化戦略の結果として今回の危機は発生し、増幅されたのである」
安倍農政倒す時
鈴木教授の言葉に沿うなら、今回の輸出規制や想定される食料危機の根本原因も、食料自給を奪って食料を金もうけにしてしまった貿易自由化にこそある。しかし、先の3機関共同声明は、食料危機を招かないよう、食料貿易を可能な限り自由にすることが重要だと述べている。これでは、人々の苦しみにつけ込んださらなる金もうけにつながるだけではないか。
つまり、今後想定される食料危機は、コロナによって引き起こされるのではなく、コロナを引き金として、新自由主義的な農業支配、グローバルな食料支配の結果として起こるということだ。
もちろん日本も例外ではない。すぐに食料危機とまではいかなくても、貿易自由化の中で農業を売り渡し、輸出農業が生き残ればいいという安倍農政の問題性がコロナを契機として次々とあらわになっている。
新自由主義のもとではもう生きられないことが、コロナで激烈に突き出された。労農連帯を強め、安倍農政にストップをかけよう。