航空会社救済に2.5兆円 破綻必至の業界に「異例」の支援
週刊『三里塚』02頁(1039号02面01)(2020/05/11)
航空会社救済に2.5兆円
破綻必至の業界に「異例」の支援
(写真 羽田空港の駐機場に並べられた飛べない機体)
安倍政権は、なりふりかまわず国内航空会社の支援に踏み出している。
国内航空会社が加盟する定期航空協会(会長ANA社長、副会長JAL社長)は「新型コロナウイルスの感染拡大における航空業界支援に関する要望」を提出した。政府の支援はそれに全面的に沿うものである。
そこでは、①「政府保証(低利・無担保)付き融資」、②空港使用料や税の支払い猶予、減免、③雇用調整助成金の拡充などを求めている。
①は、政府系金融機関による融資や政府保証によって、2兆円規模の融資枠を確保するというものだ。融資手続きの迅速化と、15〜20年の超長期・無担保の融資も求めている。金額の大きさや手法から「異例の措置」と報じられている。
②は、「最低1年間の公租公課の支払い猶予、減免措置ならびに感染症水際対策に伴い生じた損失、追加費用への給付金等」として5000億円の支援を求めた。
③は、雇用調整助成金の上限額(8330円)を撤廃して最低でも2倍へ引き上げる要望なども盛り込まれた。
安倍政権は、①の融資のために緊急経済対策で「日本政策投資銀行による危機対応融資の活用」を盛り込むとともに、日本政策投資銀行法を改定し、同銀行の出資する「特定投資業務」の期限を5年延長した。
運転資金が不足する航空会社の経営破綻が目の前に迫っているからだ。コロナショックによる資金流出額はANAで1カ月あたり1000億円、JALで600億〜700億円。ANAは、12月末時点で約4000億円あったキャッシュ(現預金、短期有価証券など)も1カ月で約1000億円蒸発した。手元キャッシュは約3000億円にまで減った。全面運休が続けば、ANAは4・2カ月、JALは5・1カ月でキャッシュが尽きる。この倒産の危機に政府は驚愕したのだ。
現在、ANAはあらかじめ約束された融資枠である約1500億円に加え、政府保証による民間金融機関や日本政策投資銀行から9500億円規模の融資のめどをつけた。JALは3〜4月に約1000億円を調達。さらに3000億円の融資を民間に要請した。しかしそれは息継ぎ程度のものだ。
ANAは、年間の売上は2兆円、営業利益は1500億円。1000億円を毎年返済しても10年以上かかる巨額の借金だ。しかも需要のV字回復がなければ、融資返済もできずに運転資金は干上がる。
現代帝国主義の屋台骨ともいえる航空産業の没落が始まった。大資本救済と一体で襲いかかる、労働者の賃下げ・解雇攻撃を許さず闘おう。