明日も耕す 農業問題の今 農家の種育成を禁止に 種苗法改悪に反対する
週刊『三里塚』02頁(1038号02面04)(2020/04/27)
明日も耕す 農業問題の今
農家の種育成を禁止に
種苗法改悪に反対する
今回、食料自給率について3回目を記して話を閉じるつもりだったが、その前に種苗法改悪について触れなければならない。安倍政権は3月3日に改正案を閣議決定し、近々国会での審議入り・成立を目指している。
種苗法については、2018年5月の本紙992号で触れたが、あらためて取り上げたい。
種苗法とは新たな品種を育成する権利(育成者権)の保護を定めた法律だが、現行の21条では「試験又は研究のため」または「農業を営む者」は原則自家増殖(※)自由とされている。原則容認が基本で、例外的に禁止する作物を省令で増やしてきた。今回、自家増殖(採種)を「原則禁止」にし、育成権者の許諾を受けなければ自家増殖ができなくするというのだ。
農水省は「登録品種の海外流出を防ぐ」ことを第一の理由としてあげているが、流出を防ぐというなら海外での品種登録が唯一の対策であると農水省自身が2017年11月に述べている。海外での品種登録を進めれば現行の枠組みでも対応は可能であり、国内農家の自家増殖と種苗の海外流出は直接関係ない。自家増殖禁止で海外流出が防げるわけではない。
むしろ海外流出というなら種子法廃止と同時に成立した農業競争力強化支援法の方が問題だ。国や都道府県の種苗の知見を民間企業に提供することが求められていて、そこには海外の企業も含まれると国会で答弁されている。全く矛盾した話だ。「海外流出を防ぐ」など方便でしかない。
在来種にも及ぶ
「原則禁止なら在来種の自家増殖もできなくなるのか」という懸念に農水省は、禁止するのは新しく登録される品種だけで、在来種は種苗法の対象とならず、自家増殖は守られるとしている。本当にそうだろうか。
品種登録の際には、主要な特徴をあらわす「特性表」というものがつくられる。だが在来種にはそんな記録などない。もし、たまたま在来種が新たな登録品種の特性表と一致したら、登録品種を勝手につくったと見なされてしまう。へ理屈に聞こえるかもしれないが、今回の改悪では、育成権者が特性表との比較で権利侵害を容易に立証できる制度を設けようとしているのだ。
今回の改悪は種を農民の手から奪い、企業による種子支配=農業支配のための知的財産=金もうけの材料とすべく法制度を整えようというものだ。
審議せず強行か
安倍政権は、この法案を新型コロナウイルス感染拡大を理由に実質的な審議をせず、4月中(あるいは5月)に衆参1回切りの形式的な審議での成立をねらっているといわれている。断じて許せない。種苗法改悪反対の声を上げよう。(※)植物を増やすには種子を採るだけでなく、芽の出た芋を植えて増やしたり挿し木、株分けなどの方法もあり、自家増殖と総称される。