リニア新幹線の正体〈下〉 高度技術過信は大事故に至る
週刊『三里塚』02頁(1038号02面03)(2020/04/27)
リニア新幹線の正体〈下〉
高度技術過信は大事故に至る
「超電導」搭載し疾走する危険性
JR東海は山梨県のリニア実験線を公開し、さまざまな広報を使って「超電導リニアは実用技術として完成されている」とアピールしている。だが、だまされてはいけない。通常の回転式モーターに対し、リニア(直線)モーターは磁石を直線上に展開する。しかも液体ヘリウムによって温度をマイナス269度まで冷却して電気抵抗をゼロにする「超電導」で、浮力と推進力を得るわけだ。だがそんな複雑精密かつ過重なシステムを全車両に搭載して、自然に背く強力な磁場を発生させて疾走すること自体に根本的な無理がある。
超電導では、突如磁力を消失する「クエンチ」という現象が生じ、解明・解決されていない。
作り出される磁場は病院のMRI検査並みに強力だ。乗客は磁力を遮断する蛇腹の通路(飛行機搭乗時のような)を通じてしか各駅で乗降できない。「駆け込み乗車」など絶対に不可能だ。
136個も搭載する超電導磁石の一つでも突然クエンチを起こせば、列車はバランスを失い軌道をこすりながら停車するだろう。それが冬の南アルプス大トンネルのど真ん中で発生し、火災事故に発展したらどうするのか? 乗客の避難・脱出のために、磁力は切れるか? 液体ヘリウムが漏れ出たらどうなる?
JR東海のマニュアルには「乗客は避難はしごで降車し通路を風上に向けて歩いて逃げる」以外の確認は見当たらない。
また実用化されれば、時速500㌔の強力な磁性体同士がトンネル内で頻繁にすれ違う。相対速度は音速(1235㌔)に近づく。この人類にとって未知の領域の実験はまったく行われていないという。
超電導リニアとは、従来の鉄道とまったく互換性のない未検証の技術であり、原発並みに制御不能で危険なものなのだ。
生活・自然破壊は成田と同じだ
リニア新幹線計画はとてつもない環境破壊だ。最難関工事とされる南アルプストンネルは、静岡県(川勝平太知事)が大反対していることで着工のめどさえ立っていない。工事を進めればトンネル湧水によって大井川の水が毎秒2㌧減るという予測をJR東海自身が出している。だが「全量を大井川に戻せ」という県側の当然の要求に対し、JR東海がやる気のない不誠実な対応に終始しているのだ。
事態打開のために国交省が乗り出し、住民対策のためと称して19年にNAA幹部を招いた勉強会を催したが、住民の怒りの火に油を注いだだけだった。27年開業予定はすでに破産している。
トンネル以外の高架部の建設では、土地明け渡しを住民に暴力的に迫る買収を仕かけている。まさに成田と同じだ。
沿線各所ではすでに、トンネル工事の残土をひっきりなしに運ぶダンプカーの列が、村の生活道路を占領している。
自然破壊、生活破壊に怒りを燃やす住民の一層の決起は不可避だ。
われわれの生活に「世界最速の地上列車」など無用であり、「新たな経済圏」というおとぎ話も崩壊した。成田拡張・第3滑走路建設と並ぶ、最悪の国策である暴走リニアの実態を徹底的に暴き、労働者人民の力で粉砕しなければならない。
(田宮龍一)
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(前号〈上〉の「全長286㌔」は品川―名古屋間の長さです。)