リニア新幹線の正体 〈上〉 超電導高速列車 500㌔の暴走 JR東海・葛西の野望で計画推進

週刊『三里塚』02頁(1037号02面01)(2020/04/13)


リニア新幹線の正体 〈上〉
 超電導高速列車 500㌔の暴走
 JR東海・葛西の野望で計画推進

(写真 山梨の実験線を走るリニアモーターカー)



(写真 2013年11月16日、米の元議員、元州知事ら「有力者たち」を山梨のリニア実験線に試乗させてご満悦の葛西敬之【前列中央】)


 JR東海は2020年度の連結設備投資額を過去最高の7180億円と発表した。そのうちリニア中央新幹線の工事費が実に53%、3800億円を占める。金子慎社長は「新型コロナウイルス感染症拡大のもと、厳しい経営環境にあるが、中央新幹線の工事も着実に進める」と強調する。彼らが血眼で進めるリニア新幹線とは何なのか。

名誉会長存命中開業が至上命題

 最高時速500㌔、東京―大阪間を1時間強で結ぶ超高速列車として、リニア新幹線の工事が進められている。2027年に品川―名古屋間開業、37年に大阪まで全線開業予定。総工費9兆円。全長286㌔、南アルプスを突っ切るルートで、トンネルが86%を占め、工事による残土は合計約5680万立方㍍(東京ドーム50杯分)。無人運転で、中央制御室から全便をコントロールする。
 こんなものが今なぜ造られなければならないのか。
 「東海道新幹線は輸送能力がすでに限界。首都―関西の大動脈輸送を二重化することで、東日本大震災のような災害リスクに備える。東京、名古屋、大阪を包括する新たな巨大経済圏が生まれる。気軽に日帰りできることで、人々の生活スタイルも変わる」----などといいことづくめの公式説明がされているが、まったくのインチキだ。
 リニア新幹線は、高度技術を過信し、安全を無視して大事故を引き起こし、日本経済を一層の破滅にふちに追いやり、大自然と沿線住民の生活の破壊する、どれをとっても百害あって一利なしの超巨大計画だ。これが国鉄分割・民営化、労働者大量首切りの首謀者でJR東海の絶対的権力者、葛西敬之の野望のもとで進められてきた。
 「世界最速の地上走行列車」への妄執に取りつかれた葛西は、技術陣の慎重論を押し切り、「採算度外視」という内部からの批判を封殺し、計画推進の号令をかけてきた。そして、東日本大震災後に政府から「国土強靭化」の名目で、リニアへの財政投融資3兆円を引き出した。
 今やJR東海経営陣の間では、「葛西名誉会長が生きているうちにリニア全線開通を」が合言葉になっている。
 リニアは、事実上の「国策」として進められている。第1次から安倍政権と癒着する葛西は、ドル箱の東海道新幹線の黒字をこの事業にとつぎ込んだ上、「リニアに国の金を3分の1出させる」という持論を実行に移していく。安倍と葛西は異様な頻度で会合を繰り返した。

安倍政権と癒着し財投3兆円!

 2016年5月27日、安倍は伊勢志摩サミット後にオバマ大統領と共に広島を訪問した帰り、新幹線名古屋駅で下車し、葛西に出迎えられホテルに一泊した。直後の6月1日、安倍は「新たな低利貸付制度でリニア計画を前倒しする」と、財政投融資3兆円をぶち上げる。名古屋が二人の「最終的確認」の場だったことは間違いない。
 無担保で3兆円、30年間も元本返済を猶予、超長期なのに平均0・8%の低利。常識ではありえないデタラメな融資だ。「30年後」には、安倍も葛西もこの世にいない。事業が破綻しても誰一人責任をとらないということだ。
(田宮龍一)

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