明日も耕す 農業問題の今 種の自家増殖を「禁止」!? 種苗法の改悪を許さない
週刊『三里塚』02頁(1035号02面04)(2020/03/09)
明日も耕す 農業問題の今
種の自家増殖を「禁止」!?
種苗法の改悪を許さない
農水省は2月18日、種苗法改正案を自民党農林合同会議に示し、了承された。3月にも改正案が通常国会に提出されようとしている。これは農家の自家増殖を「原則禁止」にしようという農業の根幹を揺るがす攻撃だ。
「自家増殖原則禁止」とはどういうことか。
栽培した作物の種子を採りそれを播く「自家採種」や、芽の出た芋を植えて増やしたり株分けやわき芽挿しなど、古来農家にとって当たり前の栽培をするのに、許可を得なければならないなどというとんでもないものだ。代々自分の農地で自家採取した種子で栽培していた作物であっても、品種登録していなければ自分のものではないとされてしまう。その作物を栽培農家より早く民間企業が登録してしまえば、その農家は特許権侵害で告訴され、損害賠償を求められることにもなりかねない制度なのだ。
海外流出対策?
なぜこのような改悪をしようとするのか。「シャインマスカット」や「とちおとめ」などの優良品種が海外に流出して栽培され、日本の市場を奪っていることへの対策だという。種苗法は、新品種の開発に莫大な資金や長い研究期間が必要になることから、品種登録によってつくった人の権利を守るものとされ、今回の「改正案」は、品種登録時に利用条件をつけて、優良品種の海外流出や育成した地域以外での栽培を制限できるようにするという。悪質な違反には個人で最大1000万円、法人で3億円の罰金を科す。国内の品種を海外に持ち出すことは今の種苗法でも禁止されているが、増殖の実態を把握しないと抑止できないと、農水省は自家増殖を許諾制にすることの必要性を説明する。
種子の企業支配
だが、本当に海外流出対策が許諾制の理由なのか。「種を制するものは世界を制する」として、グローバル種子企業が種を独占するためにやってきたことを見れば、答えは明白だ。公共の種子の提供を後退させ、自家採種を禁じて自分たちのものにして、遺伝子組み換えやF1の種を買わざるをえない状況を世界に広げるのが企業のやり口だ。
種子法廃止で日本の公共種子事業をやめさせ、農業競争力強化支援法で種の情報を企業に譲渡させ、種苗法改悪で自家採種は禁止するという安倍政権の3点セットは、まさにこうした企業の要求に応えるものであり、大型貿易協定と一体なのだ。「在来種や品種登録されたことがない品種は従来通り自家増殖を制限しない」などという農水省の説明は何の気休めにもならない。
種子法の廃止から2年。農民の怒りを背景に、同法に代わる独自に種子を守るルール整備の動きが広まり、23道県で条例化やその準備が進められている。種苗法改悪策動は農民の怒りの火に油を注ぐものだ。もはや安倍農政を許すわけにはいかない。改悪反対の行動に立ち上がろう。