明日も耕す 農業問題の今 輸出農業に未来はあるか 増加の実態は加工食品
週刊『三里塚』02頁(1034号02面05)(2020/02/24)
明日も耕す 農業問題の今
輸出農業に未来はあるか
増加の実態は加工食品
農水省は2月7日、2019年の農林水産物・食品の輸出額が9121億円になったと発表した。目標の1兆円には届かず、江藤拓農水相は新たに輸出目標を設定すると言う。今回はこの「1兆円輸出」を深掘りしたい。
安倍首相は施政方針演説で「日本の農林水産物の世界への挑戦を力強く後押しする」と述べた。4月には政府の司令塔組織となる輸出本部が農水省に設置されるという。
だが、安倍政権が声高に叫ぶ1兆円輸出の実態はどうか。「1兆円」というと大きな数字に聞こえるが、農産物に限るなら、昨年の加工品を含む農産物の輸出額は5877億円だ。他に水産物の2873億円と林産物の371億円が加わって計9121億円になる。
では農産物5877億円の中身はどうか。内訳は、日本酒などアルコール飲料、ソース混合調味料、清涼飲料水などの「加工食品」が3291億円で農産物輸出の56%を占める。そしてタバコや緑茶など「その他農産物」が991億円(17%)で、この2分野で農産物輸出の4分の3にもなる。
安倍首相が輸出の成果で強調する牛肉や牛乳、リンゴ、米など、誰が見ても農産物と分かる項目は、「畜産品」が708億円、「穀物等」が462億円、「野菜・果実等」が445億円で、実は1615億円に過ぎない。
謎の品目896億円
さらに、2月9日付農業新聞の「農産物輸出連続増の実態」の記事に次のような指摘がある。「同省(農水省)が7日に発表した輸出資料には、登場しない農産物の品目がある。『各種の調製食品のその他のその他』と呼ばれる関税コードに含まれる食品だ。896億円で、単一品目としては最大額。牛肉の297億円やリンゴの145億円を大きく上回る。前年に比べ約100億円伸びていることから、農産物全体の増加額216億円の半分は、この品目に属する食品の伸びが稼いだ計算だ」
農水省のサイトで資料に当たってみると、この謎の品目は「加工食品」に含まれることが推測できる。だが、項目立てもなく、たしかに登場しないので、報道で指摘されなければ全く分からない。その実態について、記者会見での農水省の説明は「さまざまな食品類の寄せ集めで中身は分からない」というものだ。
安倍の大ペテン
農水省は、農林水産物・食品輸出額が「7年連続して増えた」と言うが、その主力は「加工食品」(大半の原料は外国産だ)であり、1兆円に迫った立て役者は実態がよくわからない「その他」の品目なのだ。これが1兆円輸出の内実だ。何が「成長産業」だ。「右肩上がり」の輸出に農業の未来があるかのように言いつくろう安倍の言葉は全くのペテンだ。これを農政の目玉にして企業の農業参入を促進し、小農つぶしを促進することなど絶対に許すわけにはいかない。