新やぐら裁判 3人の学者が証言 農地強奪は違法・不当だ

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週刊『三里塚』02頁(1033号02面03)(2020/02/10)


新やぐら裁判
 3人の学者が証言
 農地強奪は違法・不当だ


 1月30日、千葉地裁民事第2部(内田博久裁判長)で、22日に続き新やぐら裁判の証人尋問が行われた。今回は3人の学者・専門家が証言に立ち、それぞれが市東孝雄さんの天神峰の畑に建てられた看板・やぐら(反対同盟所有)の正義性、農地強奪攻撃の不当性を強く訴えた。

内藤光博証人

 最初に専修大学教授の内藤光博さん(憲法学)が証言台に立った。
 市東さんの農地は、農民としての生存にかかわる重要財産である。そして看板とやぐらは、自らの生存権的財産権を守るための表現活動であり、抵抗のシンボルである。
 NAAは本来収用法をもって行うべき公共事業にかかわる土地収用を、農地法を使った民事裁判によって行おうとしている。だが農地法の立法趣旨からして、そんなことは許されない。農地法は農業の保護、耕作者の権利保全のためにつくられたのであり、農地法を悪用して市東さんの農地を暴力的に奪おうとは、本末転倒である。
 民主主義の発展・進歩は、暴力を発揮することなく合意によって政治を進めることにこそある。

石原健二証人

 午後からは元立教大学教授の石原健二さん(農業経済学)が証言した。
 三里塚闘争の初期に現地を訪れ、三里塚を国内有数の畑作地帯として実感し、このすばらしい農地が空港建設で取られてしまうことは大問題だと危機感を燃やした。
 80年代に全世界で「貿易自由化」の流れが強くなる中で、日本の農業は衰退の一途をたどってきたと言える。それは食糧自給率の著しい低下に端的に表れている。工業製品を外国に売って、足りない農産物は外国から得ればよいという基本姿勢によるものだ。
 市東さんが完全無農薬野菜を年間数十品種栽培していることは、並大抵の努力ではできない。今全世界的に「家族農業」「多品目小規模生産」が再評価されている。米、オーストラリアなど一部を除けば、全世界の農業は圧倒的に小規模農家だ。安倍首相のように、「規模拡大」を追求してもうけを出せというのは、特に傾斜地の多い日本には通用しない。レーニンは道半ばで死んだが、「社会主義国」における大規模化、機械化、単作一辺倒の推進も見直されるべきではないか。
 農地法を悪用して土地を奪い取ろうとは、NAAの手法は稚拙だ。農業者としての市東さんを無視したやり口は認められない。生産者と消費者を直接結ぶ市東さんたちの農業と産直運動にこそ公共性がある。

鎌倉孝夫証人

 3人目の証人として埼玉大学名誉教授の鎌倉孝夫さん(経済学)が証言した。
 まず成田空港の発着回数について、現在でも容量の7割しか使われていないなど、容量と実績がずっと乖離(かいり)して推移してきたことを突き出し、「需要があるから機能強化でなく、機能強化のために需要をつくる」という成田の航空需要の欺瞞を暴き出した。そこから出てくる需要は人間生活の直接の基盤になる需要ではなく、空港会社のもうけをいかに拡大するかという私的利益追求でしかない。その上、労働者や農民の生活を破壊しなければ建設も拡張もできない成田空港には公共性があるどころかむしろ公共性を破壊していると喝破した。
 空港拡張を、「戦争に敗れて、それでも戦争に勝とうと戦力を増やすのと同じことだ。人間そのものを破壊してしまう行為」と断罪した。
 そして、これとは対照的に市東さんの営農について、疎外労働の対極にある人間本来の主体性、意識性に基づいた労働で、社会的にも人間の生活にとって絶対に必要な農業生産活動だと意義づけ、その基盤である土地を奪うことは絶対に認められないと語気鋭く強調した。
 次回は3月18日。最終弁論が行われる。
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