国交省が成田拡張を認可 住民生活破壊の計画を弾劾する

週刊『三里塚』02頁(1033号02面01)(2020/02/10)


国交省が成田拡張を認可
 住民生活破壊の計画を弾劾する


 1月31日、国土交通省は、成田空港の第3滑走路新設などの拡張計画を認可した。年間発着回数を50万回に増やすとともに、飛行時間を1時間半延長し午前5時〜翌午前0時半にするとしている。満腔の怒りで弾劾する。

騒音は人を殺す

 第一に、拡張予定地と騒音下周辺の「ここに住み続けたい」という住民の意思と権利を踏みにじり、生活を破壊する許しがたい暴挙だ。用地内200戸、騒音下1198戸の移転が、空港拡張によって強いられる。再度の移転が多数あるだけでない。今度の移転では、NAAによる金銭買収のみで、代替地が与えられず離農が不可避だ。農業を受け継いでいる青年たちの将来が断ち切られることになる。騒音下では、補償の線引きにより地域が分断され、村落の共同性が解体される。残された住民には、2分間ごとに騒音が浴びせられる。
 住民は、説明会・公聴会において次のように訴えてきた。
 「現状の朝の6時から夜の11時までの飛行時間でも我慢の限界。これ以上は認められない」「国内においても大阪空港では10時間、福岡空港でも9時間の静穏時間が確保されている。私たちには人権がないのか」
 航空機騒音は、身体的・精神的に苦痛を与える威圧・脅迫音であり、深夜に1機でも飛べば、睡眠を阻害する。成田で睡眠を妨げる夜間騒音の発生回数は現在でも年間で4千回で、厚木基地の10倍ものリスクだ。欧州WHO(世界保健機関)夜間騒音ガイドライン(09年)では「最低8時間以上の飛行禁止が必要」とされている。
 第3滑走路供用後は、さらに夜間飛行延長し、静穏時間は4時間半だ。
 これは緩慢な殺人攻撃だ。NAAは深夜早朝帯の滑走路使用を交替にするスライド方式で南北での静穏時間を7時間確保するとしているが、飛行コースに挟まれた谷間地区では騒音の発生回数は変わらない。
 また、直下および周辺地区では、風向きで運航を変更するので「静穏時間」のスライド変更そのものが睡眠習慣をズタズタにする。スライド方式の手本のロンドン・ヒースロー空港では、24時間使用とはいえ午後11時〜午前7時には定期出発便の設定が認められていない。
 第二に、拡張計画そのもののデタラメさである。

成田は破綻必至

 NAAを新滑走路建設に突き動かしているのは、成田空港の「表玄関」の位置からの転落と没落の危機である。田村明比古NAA社長は「成田は、表玄関から勝手口に」などとふざけた言辞をもてあそんでいる。そもそも成田空港は国家政策として「日本の表玄関」として位置づけ、テコ入れし続けたからこそ維持されてきた。それが希薄化すればNAAに展望はない。
 各航空会社に対し、羽田への就航条件として成田空港の路線維持が強制された「成田縛り」は崩壊し、その結果、成田から羽田への路線移行が激化している。デルタ航空は、成田から完全撤退する。さらにヨーロッパの各国の航空会社は20年夏期スケジュールから雪崩を打って羽田に移る。ブリティッシュ航空に続き、スカンジナビア航空も成田の運航を終了する。全日空も夏季ダイヤは、成田は週64便減、23%減少だ。
 NAAの「中期長期経営構想(19〜21年度)」によると、18年度は25・6万回、目標の5・2%減。19〜21年度の目標は発着回数で27・5万回としているが、達成は不可能だ。それを無視して、20年代半ばに30万回、30年に40万回などというのは、希望的観測であり事業計画として失格だ。

巨大軍事空港に

 第三に、莫大な財政投融資が投入されることだ。総事業費は5125億円、そのうち4000億円を財政投融資からの融資とする。これはNAAの財政規模を桁外れに超えている。NAAの債務は、長期借入金を含め7500億円で、これまで年間約100億円ずつ返済してきた。このNAAがさらに4000億もの借金をし、返済することが可能なのか。
 しかも、これは第3滑走路のみの建設費であり、それに必要な旅客ターミナルや貨物取り扱い施設の整備は先送りで別としている。その費用は約8000億円と見込まれ、NAAに調達できる展望はない。結局は一部の利権屋が利益を手にし、労働者人民は塗炭の苦しみを受けることになる。
 国交省は、認可の理由を「国際競争力を強化し、増え続ける訪日外国人に対応するため」と言っている。まさに日帝の空港・航空政策は「国際競争に勝つ」ための政治的・経済的・軍事的基盤づくりである。巨大軍事空港の完成は没落する日帝の悲願なのだ。
 地域住民と共に空港機能強化=巨大軍事空港建設を粉砕しよう!
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