明日も耕す 農業問題の今 「農村産業」に夢はあるか 関連事業に群がる投資家
週刊『三里塚』02頁(1027号02面04)(2019/11/11)
明日も耕す 農業問題の今
「農村産業」に夢はあるか
関連事業に群がる投資家
前号で報道された農業問題講演会での伊藤亮司さんの講演は、「安倍農政とは何か」をわかりやすく説き、これと対決する道筋を指し示すものだった。小欄でも示唆を得た内容をいくつか紹介したい。
前号記事にも触れられているが、「農村産業」という言葉をご存じだろうか。いかにも農村にあるさまざまな商工業というイメージで、「農村産業の成長」と言えば聞こえは良いが、実は違う。「農村産業」とは農業を取り巻く関連産業のことで、2017年に名称変更でできた「農村地域への産業の導入の促進等に関する法律」(農村産業法)なるものがあるのだ。
関連産業というと加工・販売といった6次産業化にかかわるものが思い起こされるが、話はそこにとどまらない。
伊藤さんがひときわ熱を帯びて語った話をひとつ紹介しよう。
「今の日本農業を支える260万人のうち、半分が70歳以上で、4分の1が60歳以上、それ以下の若い世代は4分の1です。4分の3の高齢者には早く農業止めろといって、4分の1だけで成長産業になるのか? なるんです。朝から汗をかいて健康を保っていた人たちが農業やめたらテレビを見てすごすくらい。すぐに足腰が立たなくなる。それなら農業を取り巻く産業に医療産業、福祉産業も迎え入れましょうというんです。これも農村産業でみんなウハウハですよ」
農業を踏み台に
農業生産を取り巻く肥料・機械・農薬の商社があり、農産物を売って加工食品メーカーが儲かる。投資家がここに金を持ってきて、ロボット産業、医療産業、人材派遣業、観光産業などさまざまな産業が周りを取り囲み、ここで儲けていこうというのが「農業の成長産業化」なのだ。農業自体は儲からなくても農業を取り巻く他産業が儲かればいい、農業はそのための踏み台になっていくのが国益だと。それをきれいな言葉で覆って推し進めているのが安倍農政だと伊藤さんは言う。
伊藤さんがこの安倍農政の構想について示された資料に「アグリシティ」という言葉があった。聞き慣れない言葉に気になって調べてみると、資料のおおもとをつくったのはみずほ銀行のグループで、「農林漁業の6次産業化に取り組む生産者及び事業者へのサポートを目的とした総額100億円のファンドをつくる」という。まさに投資のために成長産業化を提案しているのだ。
安倍との対決を
伊藤さんの講演を伺って、「農業切り捨て」「企業の農業参入」という批判だけで片づけるわけにはいかないと痛感した。農業と農村をとことん食い物するのが「農業の成長産業化」であり、安倍農政の施策なのだ。この安倍農政とどう対決するのかについても、示唆に富んだ話がなされた。印象深いところを次号で紹介したい。