全国農民会議がG20農相会合を斬る 「小農保護」の建前に逆行 新自由主義下で企業が農業支配
週刊『三里塚』02頁(1019号02面03)(2019/07/08)
全国農民会議がG20農相会合を斬る
「小農保護」の建前に逆行
新自由主義下で企業が農業支配
5月11日〜12日、新潟市でG20農相会合が行われ、34の国と国際機関が参加した。
担当者が「討議では対立するテーマを避けた」と述べた今回のG20農相会合をあらためて検証したい。
農相会合の歴史
その前にG20農相会合の歴史を振り返ってみよう。G20はもともと財務相・中央銀行総裁会議として始まり、首脳会議は2008年から始まった。農相会合が始まったのは11年のフランス・カンヌからだ。第2回の12年には「小規模家族農家の要望に留意しつつ、各国の農業部門での生産性向上に向けた投資を促進」との方向性が示された。
すなわちそれは、「小規模家族農家の保護」と「生産性向上のための投資促進」という2つの相矛盾する方向を示したものだった。
その後、16年の杭州会合(中国)では、「家族農家や小規模農家が世界の大部分の農地を経営し、また世界の食料の多くを生産し、そのことが世界の食料安全保障及び社会の安定を支えていることを確認する」と、家族農業・小規模農家の重要性を打ち出した。
翌17年ドイツ会合では「食料安全保障と持続可能なフードシステムのための責任ある農業投資」と投資促進を打ち出す。18年ブラジルで農相会合はなく、首脳宣言で「家族経営及び小規模農家の特有の必要性を考慮し、……革新的または伝統的な農業の慣行及び技術の自発的な利用及び共有を奨励する」と、「家族農業保護」へ踏み出した。
国連「権利宣言」
この動きは、18年12月の国連「小農の権利宣言」の採択となる。国連は今年から10年間の「家族農業の10年」のキャンペーンも実施している。「小農の権利宣言」では、加盟国に「小農と農村で働く人びとの権利擁護」を義務とするだけでなく、「多国籍企業や営利企業体などに規制する立場から必要な措置をとる」ことを盛り込んだ。多国籍企業・大資本に対して「小農(農民)の生きる権利」を明確にしたのだ。(農水省発表で、日本の小農は97・6%、EUは96・2%、米国は98・7%)
今回のG20農相会合では、そもそもの対立点である「家族経営・小規模農家の保護」と「企業投資の拡大」を押し隠した。
投資拡大の思惑
日本政府・農水省は「スマート農業」を大宣伝した(本紙前号)。その思惑は、企業投資の拡大にある。小農=農民保護に逆行するもので、絶対に許せない。
新自由主義は農業分野にも大きな影響を与えた。20年以上前から遺伝子組み換え技術やF1作物が急速に普及し、伝統的な農業を徹底的に破壊してきた。ISDS条項や種子法廃止=種の企業独占のように、巨大アグリ企業による世界農業の支配が強まってきた。全世界の農業・農民が壊滅的な危機にさらされている。
しかし、この攻撃への反撃が農民暴動として頻繁に起こっている。現場の農民たちの闘いが国連、G20での「小農保護」を打ち出したのだ。
日本の農民も、全世界の農民たちと団結し、農民壊滅の元凶である資本主義・新自由主義と労農連帯で闘おう。
(全国農民会議 山口敏昭)