明日も耕す 農業問題の今 残留農薬を「規制緩和」 脅かされる食品の安全
週刊『三里塚』02頁(1014号02面05)(2019/04/22)
明日も耕す 農業問題の今
残留農薬を「規制緩和」
脅かされる食品の安全
自由貿易交渉は、関税や数量の問題で語られることが多いが、実は規制緩和と一体のものだ。4月15〜16日、アメリカで行われた日米貿易交渉は何をもたらすのか。今回も天笠啓祐さんのお話からひも解いてみたい。
安倍首相は2013年2月28日の第183回国会における施政方針演説で次のように述べた。
「〝世界で一番企業が活躍しやすい国〟を目指します。……聖域なき規制改革を進めます。企業活動を妨げる障害を、一つひとつ解消していきます。これが、新たな規制改革会議の使命です」
企業というのは日本企業に限ったことではない。意を受けて、規制改革会議はさまざまな「規制」を破壊し、金もうけの前にさらしてきた。
ここでは食品添加物の規制緩和と農薬の残留基準について紹介したい。
急増する添加物
食品添加物は1970年代に、チクロ、サッカリンなどが禁止(サッカリンはのちに復活)された際、日本における食品添加物の数は増やさないという国会決議が上げられ、その後360品目前後で推移してきた。ところが2005年以降、追加承認が相次いでいる。(指定添加物の承認数2005年361品目から2018年7月現在455品目に) さらに100種類以上承認待ちになっている。なぜか。例えば、アメリカで認められている食品添加物でつくったアメリカ製のお菓子を日本に輸出しようとしても、添加物が日本で認められていなければ輸出できない。関税や数量規制を緩和・撤廃するだけでなく基準も緩和してそろえなければ、自由貿易にならないというわけだ。
昨今、大型の貿易協定が相次いでいるが、実は日本政府は2005年頃から相次いでいろいろな国とのEPA協定を発効させていて、まさに符合した話なのだ。
農薬の残留基準は2017年以降、毎月のように数種類ずつ緩和されている。量も、例えばクロチアニジンというかぶ類の葉に使用する農薬は2000倍の緩和だ。
企業支配にノー
そうした中で今、問題なのが遺伝子組み換え作物に使われる除草剤グリホサートだ。アメリカから遺伝子組み換え作物が輸入されると、残留農薬も日本に入ってくる。発がん物質であり、子どもたちへの影響も大きい。食品の検査でグリホサートの値が一番高いのが小麦で、とりわけ強力粉だという。すなわちパンが問題になる。小麦の基準値は緩和済みだ。
こうした状況を鑑みれば、日米貿易交渉で農産物など食べ物の安全はさらに投げ捨てられ、日本の農業がとんでもない競争にさらされていくことは明らかだ。
しかし、いくら企業に都合の良いしくみや基準をつくっても、労働者民衆が団結してノーを突きつければ企業支配は破綻する。阿佐ケ谷再開発への怒りを獲得したほらぐち勝利はそれを示している。