明日も耕す 農業問題の今 コンクリート農地の正体 企業参入・収益向上狙う

投稿日:

週刊『三里塚』02頁(0993号02面04)(2018/06/11)


明日も耕す 農業問題の今
 コンクリート農地の正体
 企業参入・収益向上狙う


 前回、農業関連改正法の可決成立を批判し、とりわけ「農地バンク」と「コンクリート農地」の問題について「農民を圧殺して企業が農地を直接所有することが最終目的」と断罪した。さらに詳しく見よう。
 問題の法案は、「農業経営基盤強化促進法等改正案」というものだ。今回は農水省が、「底面がコンクリート等で覆われた栽培施設を農地に設置する行為は、農地転用に該当しないこととする」と趣旨説明している「コンクリート農地」について取り上げたい。

転用許可不要に

 現在の農地法では、農地は「耕作の目的に供される土地」と定義され、作物の育成を助けるための耕耘(こううん)や整地、施肥、除草などが行われていることが条件となっている。コンクリート舗装した土地は耕作できない土地と見なされ、農地には認定されない。
 そのため、農業用ハウスなどの底地を全面コンクリート張りにするには、農地転用の許可が必要だ。手続きに通常5週間以上もかかることや、固定資産税などの税額が宅地並みに膨らむことがやり玉にあげられていた。
 固定資産税は10㌃当たりの全国平均で、宅地は年約1万2千円だが、農地なら約千円と10分の1以下だ。
 改悪によって、底地を全面コンクリート張りする場合でも、農業委員会に届け出れば、農地として扱われる。転用許可は不要となり、固定資産税は大幅に減る。
 近頃では「水耕栽培」などの登場により、コンクリートで覆われた床の上で作物を栽培する事例も増えている。だから「農地」扱いすることで農家の税負担が減ると喧伝されるが、今回の「改正」は決して農家のためではない。
 コンクリートの土地を固定資産税が安い農地に認定することで生産コストを引き下げ、企業の農業参入や収益向上につなげることがねらいだ。
 TPPの発効に備え、国内農業の競争力強化として進められたものなのだ。

問題点は先送り

 法案は、さまざまな問題点が指摘されながら、ろくな論議もなしに強行可決された。
 例えば、地面をコンクリート張りにすれば、倉庫や駐車場などに流用されかねない。農水省は「農業委員会がチェックする」と強調するが、実効性は疑問視されている。
 また、施設を経営する企業などが倒産した場合、コンクリートの除去など原状回復はできるのか。今でも全国の大規模施設園芸と植物工場の事業者の45%が赤字に陥っていて、撤退リスクを抱えている。企業が原状回復しない場合、行政が代執行する措置が2009年、農地法に盛り込まれたが、代執行が行われた実績はない。
 その他、農地の中に大きな施設が建てば、日照や通風、そして施設から出る排水も懸念材料だが、施設の条件については「周辺の営農に支障を生じない」と定めているだけ。具体的な基準は、今後定める省令に盛り込むと言いなす。
 「耕す者に権利あり」を掲げてつくられたはずの農地法はどんどん耕作者主義が削られ、企業のためのものに改悪されている。安倍による農業改革を粉砕しよう。
このエントリーをはてなブックマークに追加