ＮＡＡには農地奪う権利ない
　反対同盟事務局　萩原富夫さんに聞く

　６月28日の請求異議裁判まで残り１カ月を切った。次回は、東峰の萩原富夫さんの証人尋問、天神峰・市東孝雄さん本人尋問が行われる。反対同盟顧問弁護団は６月２日、現地を訪れ尋問準備の打ち合わせを行った（写真下）。梅雨入り直前で農作業が繁忙を極める中、市東さんと萩原さんに裁判に向けた決意をうかがった。今号では萩原さんのインタビューを掲載します。
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　----今回、萩原さんは裁判所ではじめての証言をされるわけですが、特に訴えたいことは？
　大きくは二つ。ひとつは、悪辣（あくらつ）な手法で空港建設を推し進めてきたＮＡＡに強制執行を行う権利はないこと。もうひとつは、かけがえのない農地と土の重要さ。市東さんの農地は取り換えが利かないことについて同じ産直をやっている立場から訴えたい。
　----萩原さんが東峰に来られる前年にＮＡＡは神社林を違法に伐採してＢ滑走路の供用を強行しています。さらに東峰の森を破壊して誘導路を増設、Ｂ滑走路も北側に延伸し、昨年もＢ滑走路でオーバーラン事故などが起きています。
　これまで天神峰・東峰の住民に対して空港建設を嫌がらせ的に強行し、住民を無視した政策をずっとやっている。第３滑走路建設、Ｂ滑走路を更に北側に１千㍍伸ばす機能強化策による移転対象者と、東峰・天神峰の住民とは違う扱いをしている。東峰とはもう交渉しないと言い、市東さんに対しては強制執行で暴力的に、権力を使っても取り上げるというやり方をやっているわけだよね。周辺住民には話し合いと言いながら、他方で強硬姿勢で来ている。これは一体何なんだろうと。次回の証言は、彼らが言う「話し合いの努力」もなしに強行してきたＮＡＡの暴虐を、時系列に追って弾劾していくことになると思う。
　----市東さんの農地について萩原さんが思うことは。
　03年にＮＡＡは市東さんの農地について、自分が所有者だと登記をした、名義変更をしたと発表した。そんなのは寝耳に水の話で、市東さんには一言も断りなく売買が行われていて、元の地主はその後も地主面をして地代を取っていたわけでしょ。そんな不当なやり方は許せない。
　これ以上農業に適した農地はないんだよね。農薬も一切使わず正直にやってきている。他に移って今まで通り有機農業ができるのかと言えばそうじゃない。できない。育つ速度、輪作の組み合わせだったり、土を理解しないと有機農業はできない。工場で物を作っているんじゃないんだ。

　----産直運動の方にとっても重大なことです。
　取り上げ対象農地は市東さんの耕作面積の７割。産直全体では４分の１以上になるんじゃないかな。強制執行が行われたら、今まで野菜を取ってくれていた人に届けることができなくなる。だけど私たち農家は、消費者との関係を切ることはできない。
　----萩原進・事務局次長はそれを、顔の見える以上の親戚のような関係と言っていました。
　親父が言っていたように、それくらいの関係にもっていきたい。産直の会員との関係で言うと、畑、農地は消費者・会員のものでもある。われわれが野菜をつくって会員に届ける。そういう意識、考え方でやっていこうと思っている。消費者とのつながりを深めながら、みんなの農地・命を守りたい。
　----あろうことか裁判所が農地取り上げの手先になろうとしています。
　市東さんへの強制執行の策動は、71年代執行以来の反対同盟員の農地への攻撃だよね。闘いの結果、事業認定が失効し、土地収用法が適用できない。それなのに、どうして農民を守るべき農地法で取れるのか。その手先になるなら本当に裁判所の死だ。
　----沖縄・福島ともつながる問題ですね。
　国の政策に従って裁判所は、原発や基地建設を容認してきた。企業の言いなりで経済成長を優先するために裁判所があるのか。裁判所は、法・正義の立場に立って毅然とした立場を取るべきだ。政治の混迷だって、これが招いていると言ってもおかしくない。あんなめちゃくちゃな、ウソばっかりの安倍や麻生の言葉に合わせ、文書だって書き変えてしまう。権力を持った者にへつらっている裁判所をただしていかないと。ウソ、デタラメは許さないという決意で証言したい。
　----最後に青年への訴えをお願いします。
　若者には、闘いの現場が見えにくくなっている。だからこそ意識的に現場を見に来てほしいと思う。
　反対同盟が健在である限り空港建設はできない。現闘はじめ全国の支えがあって闘えるし、同盟が闘うことで全国の闘いの支えにもなる。お互いが支え合ってこれからも闘っていきたい。傍聴に入れない人が出るのは心苦しいですが、仲間を連れて前回以上の大結集で裁判所を埋め尽くそう。７・８天神峰樫の木まつりに集まり、結審策動を阻もう。