大地の響き 投稿コーナー
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若きマルクスの情熱
東京 水樹 豊
現在上映中の映画「マルクス・エンゲルス」(ラウル・ペック監督)が話題を呼んでいる。
「ライン新聞」記者としてプロイセン王国の暴虐を舌鋒鋭く糾弾したために、妻のイェニーと幼い娘共々国外追放にされるマルクス。紡績工場主の息子でありながら父親の横暴な経営に憤り、労働者の証言を集めるためにマンチェスターの労働者街に飛び込むエンゲルス。映画は、二人の若き革命家が運命の出会いを経て「共産主義者同盟」を結成し、その綱領として『共産党宣言』を執筆するまでを描く。
官憲に追われ、貧困に悩みながら、革命への抑えがたい情熱を胸に苦闘するマルクスとエンゲルスの描写は実に躍動感にあふれて生々しい。「抽象的な観念論」に飽き足らない彼らは、プルードン、ルーゲ、ヴァイトリングといった哲学者や先輩活動家に論戦を挑み、口角泡を飛ばして批判し、予定調和などうんざりだとばかりに大事な会合をぶち壊しにする。なぜ彼らは貴重な「同志たち」を激しく批判するのか。そんな疑問がますます観客を物語へ引き込んでいく。
そして迎えた「正義者同盟」の総会。マルクスの著書『哲学の貧困』を手に登壇したエンゲルスは「人類みな兄弟」という同盟のスローガンを猛然と批判する。「ブルジョアジーと労働者が兄弟か? いや敵同士だ!」「必要なのは激烈な闘争だ。プロレタリアは自分自身を解放することで全人類を解放する。そして生まれる――共産主義が!」。エンゲルスの熱弁にボロをまとった労働者たちが一斉に賛同の挙手で応え、正義者同盟の共産主義者同盟への改組が決議される。労働者階級自己解放の思想としての共産主義が、労働者自身の革命組織とともに産声をあげた瞬間だった。
階級融和を拒否して共産主義革命の思想に迫る若者たちの姿は、21世紀を生きる私たちの胸を強く打たずにはおかない。