団結街道
週刊『三里塚』02頁(0990号01面04)(2018/04/23)
団結街道
「守るに足る幸せな暮し」があれば戦争にはならなかった。『暮しの手帖』初代編集長の花森安治はそう考えた。朝の連ドラで知ったとき、生活保守主義的な甘い考えで阻めるかと反発を覚えた▼「ぜいたくは敵だ!」「欲しがりません勝つまでは」「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」の標語を生んだ大政翼賛会宣伝部に属し、戦争に全力で協力した安治が迎えた8月15日の敗戦▼上野の山から、これまで真っ暗だった町に一斉に電灯が点るのを見て「なんにもいらない底抜けにワーッとうれしいのは、あとにも先にもこれ一回」「暮しを犠牲にしてまで闘うものはなかった」と実感した▼2・1ストまでの間、資本家、役人、警察官よりも「庶民」が主人公の社会を体感。「ぼくが偉そうに自信をもって人のことまで、日本人はみんな立ち上がるんじゃないかといえるぐらい痛烈なショックを日本人みんなが受けた」「一度あったということは、もう一度あり得る」安治はペンの力にかけた▼編集会議では「甘っちょろい、きざな文章を書いていて、それで世の中が動くと思うのか。相手の肺腑(はいふ)をえぐることは、ピストルにはできんぞ。言葉はそれができると、僕は思う。その力を諸君が信じなければ、この仕事も無意味だ」と激怒した▼「僕らの暮しと企業の利益・政府の考え方がぶつかったら企業・政府を倒すということだ」。甘いのは筆者自身だった。