明日も耕す 農業問題の今 種子法廃止で何が起きる 大企業の農業支配加速
週刊『三里塚』02頁(0985号02面05)(2018/02/12)
明日も耕す
農業問題の今
種子法廃止で何が起きる
大企業の農業支配加速
昨年4月、ろくな審議もせずに「主要農産物種子法(種子法)」の廃止法案が国会で可決された。今年4月1日からの実施を前に、あらためてその問題点がクローズアップされている。
種作りの民営化
種子法は稲、麦、大豆などの主要農産物の種子の品質を管理し、優良な種子を安定的に供給することをすべての都道府県に義務づけた法律だ。戦後、日本の基礎的な食糧の生産を立て直し、食糧増産のために公的機関に限定して優良な品種を開発、育成、普及させるために制定された。それが2016年10月に行われた規制改革推進会議農業ワーキンググループなどで廃止が提起された。
その中で「戦略物資である種子・種苗については、国は、国家戦略・知財戦略として、民間活力を最大限に生かした開発・供給体制を構築する」「民間の品種開発意欲を阻害している主要農産物種子法は廃止する」と掲げられているのだ。まさに種づくりの民営化だ。
日本でも高度成長期までは、多くの農家が自分の使う種子を自家採種(自分で種をとる)してきた。
農業は自然と密接に関わっているので、その地の特徴にあった品種の種子が望ましいからだ。
しかし、企業がどこでもある程度の収穫が期待できるような品種を育成し販売することが多くなり、専業農家でも種子は種苗会社から買うのが普通になった。
種子法が廃止されれば、公的種子に取って代わる民間種子は、農薬・肥料とセットの大規模農業向けの単一品種に限定されるようになるだろう。単一品種種子の大量生産・大量販売は企業の利益を最大化するからだ。そのため、種子企業の儲けにならないような品種特性は無視されるようになる。農家が作りたくても、企業が売りたい品種でなければ販売されず消えてしまう。
農家への優良種子の供給を政府の責任と明記していた種子法を廃止することで、今後、種子は民間企業の影響を直接受けるようになる。種子法廃止と農業競争力強化支援法の成立で安倍政権が目ざすのは、減反政策の廃止とも一体となった農業保護政策の完全な放棄であり、戦後農政の全面的な破壊だ。
農地法の改悪では企業の農業参入が進められてきたが、種づくりの民営化は、農民から農業を奪い、農業全体のあり方を変えてしまう大問題なのである。