生活できる収入保証しろ 政府が減反政策を廃止

週刊『三里塚』02頁(0984号02面01)(2018/01/22)


生活できる収入保証しろ
 政府が減反政策を廃止



(写真 米の生産者価格を決める米価審議会を前に農林省分室で座り込む農民の代表者【1966年】)


 1月22日から開会した通常国会では、安倍政権が「労働基準法制定以来、70年ぶりの大改革」と位置付ける「働き方改革」とともに、農林水産関係で9つの法案を提出する方針が明らかになっています。中央卸売市場の規制緩和、民営化が焦点の卸売市場改正法案、都市農地貸借円滑化法案、土地改良法改正案など重要法案がめじろおしです。今年国が減反を廃止し、米の生産調整を放棄することは重大な影響を農家に与えます。「生活できるだけの収入を保証しろ」の闘いを全国の農家と共に作り出しましょう。以下、米の生産調整に関する記事を、全国農民会議の機関誌『ゆい』第32号から転載します。(編集委員会)
 2018年度、日本の農政は大きな転換の年になります。50年近く続いてきた減反(コメの生産調整)の廃止は、「自由にコメを作って売る」ためではありません。戦後農政の根本的転換となる重大な攻撃です。

米価9600円

 安倍政権は「成長戦略」を発表し、農業、雇用、医療での規制緩和を進めてきました。
 農業の国際競争力を高める・生産性を上げる方針のもと打ち出したのが、「コメの生産コスト4割削減」「担い手の8割に農地を集約する」です。これが安倍政権の基本です。
 「コメの生産コスト4割削減」は、2023年までの10年間で、当時の平均的コスト(1万6千円/60㎏)を9600円まで下げるというものです。
 6400円の削減は大変なことです。輸入される外国産とわたりあう、または日本のコメを輸出して売るためには、いくら品質が良くても価格を下げないと勝負になりません。つまり、外国産のコメの全面的輸入解禁、農産物の輸出を政府は決断しているのです。
 韓国のコメの生産費と比較し、いかに日本の農業資材、農薬、肥料、流通費が高いかを扇動してきました。それがここ2〜3年続いている「農協改革」「全農攻撃」の正体です。
 しかし、それだけでは減らせません。15年3月農水省は「米の生産コスト4割削減に向けて」で、肥料・農薬で7%減(131円)、農機具で20〜30%減(918円)を公表しています。合わせても1千円そこそこ。
 本丸はどこか。ずばり労働費=農家の収入・所得です。農水省は金額を示していませんが、4000円の労働費を半分にすることを狙っています。15㌶以上のコメ農家でも2395円であり、小規模経営の農家はとてもコメづくりはできなくなります。

コメ価格乱高下

 JA新潟は「新潟米基本戦略」をまとめました。10年後の全国の主食用コメ需要量を766・2万㌧から686・4万㌧への減少と予測しましたが、新潟県の主食用コメ生産は55・2万㌧から54・9万㌧の現状維持です。コメ生産第1位の北海道も生産量を落とさないことを方針化しました。
 毎年8万㌧ずつ減りつづけるコメ需要。しかし、コメ生産の大所がこれまで通り生産し、他の地域もこれに続けばコメ余りは深刻になります。価格は暴落します。政府・農水省は、コメ価格が乱高下しながら9600円に近づくのを待ち望んでいるようです。

安定生産を放棄

 減反(コメの生産調整)は、生産量を制限して価格保証する政策です。減反廃止で、国として農産物の価格保証=農家収入の保証を行わず、市場経済の自由に任せます。戦後農政の根本的転換、食料確保・安定生産を放棄するものです。
 それは日本農業の柱であるコメだけでなく、農産物価格の全般的下落へ導きます。社会的生産を担う農民が「生活できるだけの収入を保証しろ」を掲げていきましょう。
(全国農民会議事務局 山口敏昭)

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